• 締切済み

熱力学的障壁とは? 電解質膜の役割

ある電池関連の文献中に熱力学的障壁という言葉が出てきたのですが,この熱力学的障壁とは一体何のことを指すのでしょうか? 書籍や検索等自分でも調べてみたのですが,解説しているサイトや書籍がありませんでした。 文献中での具体的な記述は以下の通りです。 以下一部抜粋 /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// 【諸言】 CO2 の触媒による持続可能な還元は地球温暖化の解決方法の一つとなるが,CO2 は安定な分子であるため,水と直接反応させて化学変換することは難しい.本研究では,CO2 の還元系と水の酸化系とをプロトン伝導膜で分割することで熱力学的障壁を下げ,CO2 の水による光燃料化の可能性とさらなる高活性化について調べた. 【実験】 CO2 の光還元触媒として,層状半導体複水酸化物[Zn1.5Cu1.5Ga(OH)8]+2[Cu(OH)4]2–・mH2O をZn, Cu, Ga の各硝酸塩および(NH4)2CuCl4 から合成した.得られた粉末45 mg にプロトン伝導高分子膜分散溶液を混合し,撥水カーボン紙に塗布した.水の光酸化触媒として,WO3 を(NH4+)10[W12O41]10–・5H2O から合成し,撥水カーボン紙に塗布した(40 mg).両光触媒にプロトン伝導高分子膜を挟んだMEA を作成した.このMEA にはサーペンタイン状の露光部分を設けている.得られたMEA を燃料電池に組込み,前処理としてHe および水蒸気をそれぞれ供給しながら燃料電池を323 K で10 h 保った.次に,500W アーク灯から両触媒に光照射しながら,CO2 の光還元触媒側に3% CO2 を,水の光酸化触媒側に水蒸気を供給した.所定反応時間後,燃料電池からのガス成分をGC–TCD で分析した. 【結果・考察】 報文1,2 のように本研究のMEA を用いて413 K でCO2 の光燃料化を行なっても電力は得られないが,CO2 とH2 供給では量論のメタノールと電流が得られる.323 K での前処理でも電力が得られな いことを確認した(Fig. 1a).次に両触媒に光照射を行なうと,メタノールが56 nmol h–1 gcat–1 あるいは0.62nmol h–1 cm–2 の速度で得られた(Fig. 2).ここで,還元反応側の触媒量を採っている.光照射時の触媒部中心の温度は313 K だった.光照射中,メタノール生成の量論の1.5 倍の電流が得られた(Fig. 1b).余剰電流の理由は不明であるが,光燃料化された生成物の一部が吸着等により,全て回収されていない可能性がある.以上より,水の光酸化系では2H2O → 4H+ + 4e– + O2 の反応が起き,電子は外部回路を,プロトンは高分子膜を経由してCO2光還元系に移行し,CO2 + 6H+ + 6e– → CH3OH + H2O の反応が起きることを実証した.半導体触媒のみを用いて熱力学的障壁を 抑止しながらCO2 光燃料化を進める世界初の成果である. /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// 以上抜粋終了 学会用の簡易的な要旨であるため、それ以上の詳しい解説はなく,引用文献を参照しても熱力学的障壁に関する記述はありませんでした。 素人の自分が思いつくのは, 4H2O + 2CO2 → 2CH3OH + 3O2 の反応をアノード,カソードにおいてそれぞれ 2H2O → 4H+ + 4e- + O2 CO2 + 6H+ + 6e- → CH3OH + H2O の半反応にプロトン伝導膜を用いて分離することによって活性化エネルギーを下げられるという解釈なのですが,酸化反応と還元反応を分離するだけで活性化エネルギーを下げられるものなのでしょうか? 電解質膜を用いているのは,各反応を隔てることで電流を取り出しつつ光生成が進めるためだと考えていたのですが,電解質膜に活性化エネルギーを下げる機能や作用があるということなのでしょうか? ご存知の方、ご教授ください。 よろしくお願いします。

  • 化学
  • 回答数1
  • ありがとう数1

みんなの回答

  • c80s3xxx
  • ベストアンサー率49% (1631/3289)
回答No.1

著者が熱力学を理解していないのでしょう. 反応物と生成物と温度等の条件が決まったら,熱力学的に言えることはその反応が進行するかどうか,そのさいに全体としてのエネルギー収支がどうかということだけです. 途中経路については熱力学は何も情報を含まず,どのような方法をもってしても,熱力学的な条件に変更を与えることはできません. 活性化エネルギーを下げるというのは,速度論的なエネルギー障壁を下げていますが,これは熱力学の関知するところではないということです.

tsurezurePh
質問者

お礼

ご回答ありがとうございます。 おっしゃる通り仮に活性化エネルギー低下の事を指すとして,それを「速度論的」ではなく「熱力学的」と称しているところに違和感を感じます。 私の素人解釈としては著者たちは,電解質膜を挟むことで中間生成物ともいえるプロトンや電子がある種の準安定的状態を保てるため,半反応ごとの活性化エネルギーが抑止できるということを主張しているのだと考えていました。 ご指摘の通り,反応物・生成物等のパラメータが定まっているため,この場合の「熱力学的障壁」が系のエネルギー収支を指しているとは考えにくいので,「速度論的」のいい間違いだと思って先ほどの解釈に至りました、やけに「熱力学的障壁」に関して主張していましたし(はたまた本当に著者たちが理解していないのか) もっともその私の解釈にしても電解質膜によって活性化エネルギーが低下させられるということに勉強不足でまだ腹オチしきっていません。 もしよろしければご意見・ご教授いただけませんか。

関連するQ&A

  • 酸性酸化物について

    こんな文章がありました 「酸性酸化物として、二酸化炭素CO2は良い例です。これは、水に少し溶け、溶けた一部は水と反応して水分子H2Oに水素イオンH+を与えます。 例: CO2 + 2H2O ⇔ HCO3- + H3O+」 この場合、左辺のCO2が酸性酸化物(酸性)ということですよね? そうでありながら、左辺の2H2Oから左辺のCO2へOH-をあげた状態が右辺の式になるということで、 つまりは、CO2はプロトンを含むOH-をもらっていることになるので、CO2は(塩基性酸化物)塩基性なのではないのでしょうか? どこか勘違いしているようです。正しく理解するために、どなたかご教示ください。

  • 電解液にKOHを用いた燃料電池について

    水素・酸素の燃料電池で、わからないことがあります。 まず、負極で水素は還元剤として H2 = 2H+ + 2e- のように反応します。 電解液にKOHを用いた場合、KOHから電離したOH-がH+と反応し、負極でのイオン反応式は先ほどの反応式にOH-を加え、 H2 + OH- = 2H2O + 2e- となります。 ここまでは私も理解できましたが、問題は正極での反応です。 正極で酸素は酸化剤として O2 + 4e- = 2O2- のように反応します。 電解液にKOHを用いているので、正極でのイオン反応式は O2 + 2H2O + 4e- = 4OH- となるそうなのですが、なぜこのような式になるのかが理解できません。 負極においては水素の反応式にOH-を加えることで変化するので非常にわかりやすかったのですが、正極では酸素の反応式ををどうすると先ほどのようなイオン反応式になるのかがわかりません。 どなたかわかる方、教えてください。 お願いします。

  • 今日、理科の実験で酸化と還元をやりました。

    今日、理科の実験で酸化と還元をやりました。 化学反応式の勉強をしました。 酸化銅+エタノール→銅+二酸化炭素 の化学反応をやったんですが・・・ この化学反応式わかったら教えてください。 ↓↓↓ 6Cuo+□C2H5OH→□Cu+□CO2+□H2O とまではわかっています。 四角に当てはまる数字を教えてください。

  • 熱力学的に反応は進むかどうか!?グルコースの水蒸気改質反応

    グルコースの水蒸気改質反応 C6H12O6 + 6H2O → CO2 + H2O 上記の反応は熱力学的に進行するのでしょうか?進行するなら熱力学的にどうしてですか? そもそも「熱力学的に」とはどういう意味でしょうか?工学部の学生なんですが化学についてはよくわかりません。分かる方いらしたら教えてくれませんか?参考になるサイトでもけっこうです。

  • 酸化剤 還元剤の反応

    次の酸化剤還元剤の反応を完成させよ。  1 過マンガン酸カリウム(酸化剤)とシュウ酸(還元剤) <イオン反応式>  MnO4-+8H++5e-→Mn2++4H2O (1) H2C2O7→2CO2+2H++2e-(2)   <化学反応式> (1)×2-(2)×5より 2MnO4-+10CO2+6H+→3H2C2O7+2Mn2+8H2O  あってますか?

  • 化学反応式の立て方を教えてください

    こんにちは。 今化学で無機物をやっているのですが、化学反応式の立て方がまったくわからずに困ってます。 計算式を立てて答えを出す部分はよくできるのですが、酸塩基反応や酸化還元反応の部分がよくわかっていなくて化学反応式を立てろ、といわれると簡単なものなら一応はできるのですが難しいのになるとさっぱりです。 来週からテストで今まで勉強してこなかった自分が悪いのですが次の化学反応式がどうしてこうなるのかということがわからず本当に困窮しています。 どなたかこれらの式がどうしてこうなるかというのを全部でなく一部でもポイントだけでもいいのでもしよろしければ教えていただけないでしょうか? 酸化カルシウムに水を加える CaO+H2O→ Ca(OH)2+H2 水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素を吸収する Ca(OH)2+CO2→ CaCO3+H2O 炭酸カルシウムに塩酸を加えると二酸化炭素が生じる CaCO3+2HCl→ CaCl2+CO2+H2O 水酸化ナトリウムが空気中の二酸化炭素を吸収する 2NaOH+CO2→ H2O+Na2CO3 酸化アンモニウムに水酸化カルシウム水溶液を加えるとアンモニアが生じる 2NH4Cl+Ca(OH)2→ CaCl2 +2NH3+2H2O 水酸化カルシウムが二酸化炭素を吸収して固まる Ca(OH)2+CO2→ CaCO3+H2O どうかお願いします。

  • ★熱力学的に反応は進むかどうか!?グルコースの水蒸気改質反応★

    グルコースの水蒸気改質反応 C6H12O6 + 6H2O → 6CO2 + 12H2 上記の反応は熱力学的に進行するのでしょうか?進行するなら熱力学的にどうしてですか? そもそも「熱力学的に」とはどういう意味でしょうか?工学部の学生なんですが化学についてはよくわかりません。以前にも少し違う質問をしたのですが、分かる方いらしたら教えてくれませんか?参考になるサイトでもけっこうです。

  • 過酸化水素と二酸化マンガン

    高校生です。 過酸化水素に触媒二酸化マンガンを加えることによって起こる、 2H2O2→2H2O+O2 ここで、 過酸化水素が酸化剤、二酸化マンガンが還元剤の酸化還元反応が起こらない理由が知りたいです。 よろしくお願いします。

  • メタノールの酸化の発電効率を求める化学の問題で・・

    メタノールの酸化を利用した燃料電池のΔGを求め、その理論的(発電)効率を求めよ。という発電効率の問題で ΔGmをそれぞれ CH3OH -166.4 [KJmol^-1] O2 0 [KJmol^-1] CO2 -394.4 [KJmol^-1] H2O -237.2 [KJmol^-1] とし、 反応式はCH3OH+ 3/2 O2 ⇔ CO2+2 H2O ΔG:ギブスエネルギー ΔGm:(標準モルギブスエネルギー) ΔH:エンタルピー 発電効率はΔG/ΔHで出るのですが、 ΔGは-702.4[KJmol^-1]というのまでは出しましたが、ΔHの出し方がわかりません。 なぜこうなるかというのを詳しく書いていただけると幸いです。 よろしくお願いします。

  • Nafionが固体高分子型燃料電池の電解質膜に使われる理由

    固体高分子型燃料電池の電解質膜には一般的にNafionが使用されているみたいですが、なぜNafionが最も利用されているのでしょうか。 電極上でH2→2H+ + 2e- という反応が生じ、プロトンが膜中を移動していきますが、正直膜中に水分が含まれてさえいれば、別にNafionじゃなくてもいいような気がするのですが。 やはりNafion側鎖のスルホン酸基によって水を保持しやすかったり、クラスター構造をつくるからなのでしょうか。または膜の強度的な問題なのでしょうか。