解決済みの質問
先ずU238の燃焼について
ご存知と思いますが、ここで燃焼と言われているのは、核分裂反応のことを指します。
U238の燃焼特性は、U235と異なり、熱中性子(炉内の温度に見合った熱平衡状態まで、
充分減速された中性子)では殆ど燃焼せず、高速の中性子により核分裂反応が起こります。
しかし、その程度(核反応の起こる度合いは中性子との衝突後、その反応を起こす断面積で
測ります)は小さく、3%程度です。
U238は、しかし、中性子を吸収すると、U239になり、Np239を経てPu239
となり、燃料となるもので、炉内では、Pu239の生成、燃焼が起こっています。
従って、使用済み燃料中のU238は、燃料をどこまで燃やすか(燃料1トン当たりの発熱量
で表わしたMWD/ton(燃焼度)という単位が使われます)によって異なりますが、数万MWD/ton
の時、新燃料に比し、5%程度の減少となります。
黒鉛炉について
黒鉛炉では、減速材(高速中性子を熱中性子まで減速する炉内材料)や冷却材(炉内で発生
する熱を炉外に運ぶ媒体)に、軽水炉のように、水を使っていませんので(水を構成する
水素原子核は熱中性子を吸収するので燃料中のウランの濃縮度を高めなければ、連鎖反応を
維持することができないのです)、熱中性子の吸収による炉内中性子密度の減少を考慮する
必要がなく、装荷する燃料の濃縮度を上げる必要がありません。
CANDU炉について
この炉では減速材として重水が、冷却材として軽水が使われます。
重水は黒鉛と同程度の減速効果を有し、熱中性子を吸収しませんが、冷却材として軽水が使わ
れるため、軽水炉と同程度の濃縮度の燃料が使われます。
高速増殖炉について
この炉では、Pu239が燃料として使われます。Pu239は高速の中性子によって核分裂
反応を起こし、分裂時、多数の高速中性子を放出するので、核分裂反応を起こさせると同時に、
U238に高速中性子を吸収させ、燃料の消耗以上にPu239に変換させます。
その他、チェルノブイル原子力発電所のRBMK型炉では、U235を数%まで濃縮した
燃料を用い、減速材に黒鉛、冷却材に軽水を用いています。
軽水を冷却材としているため、濃縮したウランを用いますが、この炉は、制御特性に癖があり、
不安定な面があるので、消えつつあります。
投稿日時 - 2007-09-19 12:57:54
補足
ご親切なお返事ありがとうございます。
>しかし、その程度(核反応の起こる度合いは中性子との衝突後、その反応を起こす
>断面積で測ります)は小さく、3%程度です。
速中性子は、U238の原子核にあまり衝突しないのですね。
つまりU238に対する速中性子の反応断面積は小さいので、核燃料としては、
使えないのですね。(Pu239への変換を別とします。)
>数万MWD/tonの時、新燃料に比し、5%程度の減少となります。
ということは、軽水炉では、使用済み燃料の中には、Pu239に変換していない
U238が多量(90%程度?)に残っているのですね。これは、放射性廃棄物であり、使い道は無いのでしょうか?
黒鉛炉、CANDU炉、高速増殖炉、RBMK型炉のご説明ありがとうございます。
高速増殖炉は、現在試験中であり実用段階ではありません。
RBMK型炉も消えつつあるのですね。
黒鉛炉、CANDU炉、重水炉は、軽水炉に比べてあまり名前を聞かないですが、
世界中で稼動している原子炉は、軽水炉がほとんどを占めているのでしょうか?
原子炉の核燃料として、核分裂による燃焼をしている物質は、大半がU235であると
断言してもよろしいのでしょうか?
投稿日時 - 2007-09-19 19:20:42
お礼
こんにちは、
すいません。下記もご教示頂きましたら幸いです。
U235等を使用して核分裂の連鎖反応を起こしていますが、このときに使用する
物質(U235等)の持っている必要な条件は、
(1)核分裂させるための臨界エネルギーよりも、中性子の結合エネルギーの方が
大きいこと。
(2)中性子が物質に当たり、その物質が核分裂を起こした際、放出される中性子の
数が2個以上であること。
(3)中性子の反応断面積が大きいこと。
なのでしょうか?
投稿日時 - 2007-09-19 19:36:55
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ベストアンサー以外の回答(3件中 1~3件目)
燃料サイクルと言う言葉を出しておきながら、使用済み燃料の再処理があるのを失念して
おりました。確かにU238自身は燃料として使えませんが、使用済み燃料に含まれる
PuとU(まだ235が残されているので)を再処理して回収しています。
勿論、これら燃料の成分を取り出した後のものは、放射性廃棄物(高レベル)として
一時保管・冷却され、最終的に処分されます。
投稿日時 - 2007-09-20 06:16:57
補足
ご親切な回答ありがとうございます。
>核反応の起こる度合いを、反応の種類別に、吸収断面積、散乱断面積、核分裂断面積
>などで評価します。U238に対する中性子の吸収断面積には共鳴を起こすエネル
>ギー領域があり、特に大きくなる所があります。核分裂断面積は小さく、燃料として
>は使われません。
よくわかりました。反応断面積にも、吸収断面積、散乱断面積、核分裂断面積
があるのですね。(思い出しました。)
核反応を誘起させるには、核分裂断面積が大きい必要があるのですね。
(重要なことを頭の中で整理できました。)
>一旦炉内で照射されたものは、放射化されているのと、核分裂生成物に
>よって極めて高い放射能を含みますので、廃棄されるほかはないのです。
使用済み燃料中のU238が放射性廃棄物にしかならないことがわかりました。
>日本は高速増殖炉の開発に取り組んでおり、
>将来、燃料サイクルに組み入れることができるよう努力しています。
なかなか安全面で、技術的に難しいみたいですね。
>自己制御性、安定性などの点で優れた特性があり、経済的にも有利であるので、
>原子力発電の主流は軽水炉です。
わかりました。
>現在、U235の他に、Pu(燃料となるPuには239と241があります)を
>混ぜて、二酸化としてペレット状に焼結したものを燃料とした、MOX(mixed
> oxideの略)燃料というのもあります。
>このような使い方は、Puの拡散を防止する上で好ましいものとされています。
>その他、Th232から生成されるU233を燃料として用いるトリウムサイクルと
>いうのもあることを記しておきます。
いろいろと工夫しているようですが、核燃料の主流は、U235のようですね。
投稿日時 - 2007-09-20 20:49:30
お礼
>燃料の核分裂断面積は大きくなければなりません。吸収されるだけで、核分裂反応を
>起こさないようでは(U238がそれです)、燃料として使えません。
劣化ウラン弾等の兵器には使用できるかもしれませんが(但し日本では使用して
いません)、燃料としてはPu239に変換する以外にU238の使い道が
あればいいのですがね。
>燃料サイクルと言う言葉を出しておきながら、使用済み燃料の再処理があるのを
>失念しておりました。確かにU238自身は燃料として使えませんが、使用済み
>燃料に含まれる
>PuとU(まだ235が残されているので)を再処理して回収しています。
>勿論、これら燃料の成分を取り出した後のものは、放射性廃棄物(高レベル)と
>して一時保管・冷却され、最終的に処分されます。
青森県の六ヶ所村核燃料再処理施設で、これらの処理を行っているようですね。
詳しいご回答を頂きましてありがとうございます。
原子力について簡単に解説している本は、上記のようなちょっと専門的な事項
は記載されておりませんし、専門書を読むと、詳し過ぎて読むのに時間が
かかり、興味の無い部分も沢山記載されております。
このサイトで、興味をある部分だけを、詳細にご教示頂けて本当に助かります。
投稿日時 - 2007-09-20 20:50:09
>>しかし、その程度(核反応の起こる度合いは中性子との衝突後、その反応を起こす
>>断面積で測ります)は小さく、3%程度です。
>速中性子は、U238の原子核にあまり衝突しないのですね。
>つまりU238に対する速中性子の反応断面積は小さいので、核燃料としては、
>使えないのですね。(Pu239への変換を別とします。)
核反応の起こる度合いを、反応の種類別に、吸収断面積、散乱断面積、核分裂断面積など
で評価します。U238に対する中性子の吸収断面積には共鳴を起こすエネルギー領域があり、
特に大きくなる所があります。核分裂断面積は小さく、燃料としては使われません。
>>数万MWD/tonの時、新燃料に比し、5%程度の減少となります。
>ということは、軽水炉では、使用済み燃料の中には、Pu239に変換していない
>U238が多量(90%程度?)に残っているのですね。これは、放射性廃棄物であり、
>使い道は無いのでしょうか?
仰っているとおりです。炉内に装荷する前であれば、密度の大きいという性質を活かして
使い道がありますが、一旦炉内で照射されたものは、放射化されているのと、核分裂生成物に
よって極めて高い放射能を含みますので、廃棄されるほかはないのです。
>高速増殖炉は、現在試験中であり実用段階ではありません。
仰るとおりです。後で述べますが、軽水炉が現在の原子力発電の主流であり、燃料のU235を
消費するのは、資源の有効利用にならないので、日本は高速増殖炉の開発に取り組んでおり、
将来、燃料サイクルに組み入れることができるよう努力しています。
>RBMK型炉も消えつつあるのですね。
>黒鉛炉、CANDU炉、重水炉は、軽水炉に比べてあまり名前を聞かないですが、
>世界中で稼動している原子炉は、軽水炉がほとんどを占めているのでしょうか?
自己制御性、安定性などの点で優れた特性があり、経済的にも有利であるので、
原子力発電の主流は軽水炉です。
>原子炉の核燃料として、核分裂による燃焼をしている物質は、大半がU235であると
>断言してもよろしいのでしょうか?
現在、U235の他に、Pu(燃料となるPuには239と241があります)を混ぜて、二酸化として
ペレット状に焼結したものを燃料とした、MOX(mixed oxideの略)燃料というのもあります。
このような使い方は、Puの拡散を防止する上で好ましいものとされています。
その他、Th232から生成されるU233を燃料として用いるトリウムサイクルというのもあることを
記しておきます。
>U235等を使用して核分裂の連鎖反応を起こしていますが、このときに使用する
>物質(U235等)の持っている必要な条件は、
>(1)核分裂させるための臨界エネルギーよりも、中性子の結合エネルギーの方が
>大きいこと。
まず、核分裂とはどのようなものか、簡単に説明します。
ウラン、プルトニウムなどの原子核を構成する陽子、中性子(ひっくるめて核子と言います)の
何れか一個当たりの結合エネルギーは小さく、電気的に中性の中性子をぶつけると、より安定な
(核子一個当たり結合エネルギーが大きい)二個以上の核に分裂しようとします。
このとき、大体2個から3個の中性子も飛び出るので、中性子を炉外に漏らさず、吸収させない
ように制御して、一個の中性子が次の核分裂反応を起こすようにするのです。こういう条件を
満たす燃料としては、U235をはじめ、Pu239、Pu241、U233があるのです。
>(2)中性子が物質に当たり、その物質が核分裂を起こした際、放出される中性子の
>数が2個以上であること。
炉が大きく、漏れが少なければ、2個以上に拘る必要はありませんが、現実的には、2個以上
という条件が課せられるでしょう。増殖炉では、消耗する以上にPu燃料を製造する必要がある
のでこの数が多い方が有利ですが、制御が重要になります。
>(3)中性子の反応断面積が大きいこと。
>なのでしょうか?
燃料の核分裂断面積は大きくなければなりません。吸収されるだけで、核分裂反応を起こさない
ようでは(U238がそれです)、燃料として使えません。
結局、原子炉は、核分裂時に放出される中性子が増えもせず、減りもしない(これを臨界と
言います)ように制御する装置です。核分裂が起こり、発生した中性子が次の核分裂を
起こすまでの時間は、極めて短いのですが、制御上、都合の良い特性がありこれを利用して
います。
しかし、話が飛び、また長くなり過ぎますのでこの辺で終えます。
投稿日時 - 2007-09-19 21:59:12