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二重売買について。(民法総則)

noname#34093の回答

noname#34093
noname#34093
回答No.7

これは民法を勉強しようとする人が、必ずと言っていいほどぶつかる論点ですね。 他の方の解答にもあるように、不完全物権変動説というのが、一般的な理解です。(これ以上踏み込むのは、民法学上タブーとされています。) 確かに、ご指摘の通り、176条の意思主義によって売買契約では特約なき限り、所有権は当然に買い主に移転します。 ただし、これは売り主と買い主という当事者間でのみの法律関係であると理解されています。 つまり、これに第三者が絡んでくるときは、別個の考えが必要とされているのです。 第三者にとっては、契約の存在と所有権の移転という売買の当事者間の出来事というのは、簡単には知ることができません。 試しに、自宅の3件ほど隣の家の所有権移転がどこの誰との関係で行われたか、想像してみてください。 「実際に住んでいる人が買い主なんだろう」ということくらいはわかりますが、売り主や、契約内容、所有権の移転の状態などについては、簡単に知ることができません。 第三者がその不動産に関して、所有権を譲り受けようとするときにはいろいろ調査しなければならず、しかも当事者間での契約内容などを調査するというのは大変な負担なわけです。 そうすると、不動産取引が困難になりますから、経済政策上妥当でない。 そこで、第三者が物権の所在を容易に知ることができるように不動産物権制度を作っておく必要がある。 以上の考えで、登記制度というものができているわけです。 これを前提とすると、当事者間でいかに有効な取引があっても、これを第三者が認識できるようにして、初めて第三者との関係でも、自己の権利をしっかりと主張できるという制度にしたほうが、第三者の取引安全のために適切ではないかという考えがでてきます。 そこで、177条が当事者間での物権変動を登記なくして、第三者に対抗することができないと定めたのだということができます。 以上のように、当事者間での物権変動と、第三者との関係での物権変動を分けて考えているのが、現在の学説の現状です。 つまり、質問欄の事例では、「BはAとの関係では、登記の有無にかかわらず土地甲の完全な所有者である」ということはいえますが、「BはCとの関係では登記なくして、土地甲の所有者であるとは主張できない」ということになります。 以上のように説明してくると、176条と177条の関係がよく分かると思います。 要は、176条で私的自治(意思主義)の当然の帰結を規定し、177条で、第三者保護のために取引上の政策規定を定めたのです。 ・・・・・あれ?じゃあ二重譲渡ができるというのは?という疑問がまだ解決されないと思いますが、話はここから始まります。  以上のように、Bは売り主Aと契約をしていても、登記を得ない限り、第三者であるCに対しては、所有権を対抗できないということになります。(177条)  Cとの関係では、Bは土地甲の所有者ではない・・・・。  ということは、AからBに所有権が移っていない・・・・。  だったら、CはAB間の売買契約の存在に関係なく、Aから所有権を取得できるのではないか?  ・・・できるとしなければいけないのです。  なぜなら、Cは裁判において、Bが登記を得ない限りBは土地甲の所有者ではない、と言い張ることができるのですから。  そうすると、第三者が絡んできた場合には、177条の取引安全の政策規定によって、176条の意思主義を制限して、登記の獲得の先後で決着をつけよう、という価値観がでてきます。(民法学者はこう考えています)  以上を前提とすると、第三者との関係は、登記の先後で最終的な権利者を確定できれば、所有権の移転が二重、三重に行われても、所有権移転の完全性は、それほど重大な問題ではないと考えられます。  という観点から、民法上の二重譲渡は非常に寛大に考えられております。  一言で言ってしまえば、二重譲渡を無効として扱うよりも、二重譲渡というものを認めて、対抗問題を主たる問題とするほうが、取引秩序として都合がいいということでしょうか。  そういった価値判断にすぎません。  ですから、二重譲渡を無効としたほうがいいという考えも、十分成り立ちます。  ただ、現在の民法学は、そのような考えをとっていないというにすぎません。

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