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(平安時代)「娘」と「女(むすめ)」の使い分けは?

kimosabeの回答

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  • kimosabe
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回答No.3

まず「新字源」を見ますと、 「女」は「(1)おんな。め。対義語は『男』アむすめ。おんなの子。親に対していう。嫁入り前の女子。処女。イおんなのこども。ウ婦人。人に嫁したおんな。成年の女性。(2)-以下省略-」のような語釈があり、 「娘」については、「もと、美しい女子の意を表わし、特に男が女を呼ぶ愛称に用いたが、嬢と混用されている。日本では娘『むすめ』の意、嬢をその敬称に用いる」と説明しています。 中世の漢字辞書に「節用集」と総称されるものがあります。試みに『古本節用集六種研究並びに總合索引』を見ますと、 伊京集では、「娘(ムスメ、ニヤウ)」、 明応五年本節用集では「娘(ムスメ)」、 饅頭屋本節用集では「女(ムスメ)」、 黒本本節用集では「女(ムスメ)娘(同)」、 易林本節用集では「息女(ムスメ)女(同)娘(同)」 と出てきます。( )の読みは実際は漢字の右側に付されています。「ニヤウ」だけは漢字の下です。どうも「息女(ムスメ)女(ムスメ)娘(ムスメ)は同じ意味であるようです。 さて、「大鏡」ですが、その「裏書」を見ますと、   参議左兵衛督源頼定卿事 式部卿為平親王男 母前左大臣高明公女(岩波、日本古典文学大系、p367) などといったかたちが多数出てきます。これは源頼定は為平親王のムスコで、その母は高明公のムスメであるということです。男子の場合は、「男」「二男」「三男」などと細かく区別しますが、女子の場合はただ「女」と書かれるだけのようです。というわけで、すでにお察しの通り、「某女」「某の女」という表現は、「某男」に対応した形であって、「某娘」ではおさまりが悪かったのではないかと想像します。「美しい女子の意を表わし、特に男が女を呼ぶ愛称に用いた」という「娘」本来の意味が当時濃厚に残っていたとすればなおさらです。 ちなみに私には平安時代の作品に「娘」という漢字が出てきた記憶がほとんどありません。私の記憶などあてになりませんので、下記URL「古典総合研究所」をご紹介します。「語彙検索古典用言単語帳」から「『源氏物語大成』大島本」へと進み、「女」「むすめ」「娘」を検索なさってみてください。表示された本文の頭にある青字の数字は「源氏物語大成」のページ・行です。

参考URL:
http://www.genji.co.jp/index.html
sono-higurashi
質問者

補足

補足ではありません。お礼の欄には書き切れないので、ここに記します。 そもそもは「鶯宿梅の故事」すら知らず、古語辞典の凡例も読まない人間の不完全な質問に対し、専門的な回答を寄せて下さって恐縮しています。 1 「新字源」、ご紹介下さった各「節用集」の代用として「五本対照改編節用集(亀井 孝他、勉誠社)」の「女」と「娘」の項、「大鏡」の裏書の3点は通覧しておきました。 2 試みに、ご紹介下さった参考URLのサイト内のhttp://www.genji.co.jp/kensaku.htm(*)で新編日本古典文学全集「源氏物語」(小学館)を選択して「娘」を検索し、その結果を参考にして実際に6分冊の書籍で確かめてみました。4箇所には「娘」が登場していましたが何れも読者の便を目的に、誰の発言であるかを明示するために校注者が記したものであって、底本に「娘」はなかったと考えられます。 3 2と同様のことを「源氏物語大成」大島本でも実行するべきですが、今のところ、この書籍を入手できず、確かめていません。 4 「枕草子」日本古典集成(新潮社)について2と同様のことを実行した結果、次の二例が見つかりました。 第94段225-09 上「そのわたりの家の娘など、ひきもて来て、五六人して扱かせ、」 第99段250-05 上「あな、恥づかし。かれは、古き得意を。『いと憎さげなる娘ども持たり』ともこそ、見はべれ」 二例とも今日の、他家の若い女性を指すときの使い方に近いように感じています。 5 (*)に掲載されている書籍の全てについて、前項4の二例以外には「娘」の使用例を検索できませんでした(手元のPCに限って言えば、書籍に「ぬ」があり、しかも、ある条件が重なったときは文字化けし?「・b>娘」の形で「娘」が登場している)。 6 (*)で「源氏物語大成」大島本を選択しても、他を選択しても「むすめ」を検索すると大量にヒットします(ヒットしない作品もなくはない)。 7 (*)で「源氏物語大成」大島本を選択しても、他を選択しても「女」を検索すると大量にヒットします(ヒットしない作品もなくはない)。しかし、振り仮名がない場合が多く「むすめ」と読むのか「おんな」と読むのか必ずしも判断できませんでした。 8 >>「某女」「某の女」という表現は、・・・意味が当時濃厚に残っていたとすればなおさらです。 この部分は理解できた積もりです。 9 今日では庶民の家庭でも「奥さん」であり、女子の名には「姫」すら散見されます。「娘」の意味が平安時代より拡大、普及したのは当然だと思います。 有り難うございました。またの機会にも、よろしくお願いします。 20日(日)24時までに、どなた様からも新たな寄稿がないときは、当方の都合のよいときに締め切ります。

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