ppmからug/m3への変換の仕方

質問

0.08ppmからug/m3への変換、160ppmからug/m3への変換の仕方と式が知りたいです。
　どなたか教えてくださると、とても助かります(>_<)

回答No.5

homma-mon

No.4 の homma-monです．

昨夜の回答では，読みにくかったと思います．
また，一部に間違いもありました．

そこで，書き直しました．

おそらく，VOC の測定実験をなさったのですね？
けれども，パラジクロロベンゼンが 160 ppm というのは，気になります．
その環境は，「揮発性有機化合物（Volatile Organic Compounds，略して "VOC"）」がひどく高い．

【1. 体積濃度】
ここでいう「濃度」とは，「体積濃度」で，
「ある温度，圧力で，
　空気の体積 Va に対する
　対象物質の体積 Vs の比」
です．VOC の濃度を議論する場合には，温度，圧力は，通常，25℃，１気圧でしょう．
尚，以下，「対象物質」を「溶質」と書きます

その濃度を Cv であらわすことにします．すると，上の定義から
　　Cv = Vs／(Vs + Va） [1]

Cvは必ず１より小さくなります．
もし，VsとVaとが同程度の量でしたら，Cvは，さほど小さくはならないので，百倍して表示してもいいでしょう．パーセントでの表現です．
　　例えば，空気中の O2 の濃度は 21%

けれども，Vs が Va の百万分の一程度の微量の場合には，小数点の後に"0"がズラズラっとたくさん並ぶことになって，とても見づらいです．

そこで，Cv を百万倍した数値を使うことがあります．それが「ppm」での表記です．
因みに，十億倍した値は "ppb"（この "ppb" はこの投稿の最後にまた出てきます）

そして，ppm 表示をしたくなるほど，Vs が Va に対して非常に小さいときには，
　　Vs + Va ≒ Va
ですから，[1]式を
　　Cv = Vs／Va [2]
としても，殆ど実害なし．以下，この近似を前提とします．
　　その方が，式がスッキリします．

この前提で，[2]式を変形すると，
　　空気の体積 Va
　　溶質の体積濃度 Cv
から，溶質の体積 Vs を簡単に算出できます．
　　Vs = Cv Va [3]

尚，室温，1気圧程度の場合，
「気体物質Aと気体物質Bとを混合したとき，
　その混合ガスの体積は，元の成分の体積の和と等しい」
と言って構いません．

上記の「体積濃度」の考えは，このことに基づいています．．

【2. 質量／体積濃度】
「Va の体積の空気の中に Ws の質量の物質が含まれている」場合の濃度を
　　Cm = Ws/Va [4]
として表現することもあります．
揮発性有機化合物（VOC）の濃度を表現するのにも使われているようです．

そして，質問者さんのご質問も，
　　Cv を Cm に換算するにはどうすればいいのか？
ですね．

【3. 換算のポイント】
ここで，
(a) 1 molあたりの気体の体積は，物質によらず一定値
(b) 1 molあたりの物質の質量は，分子量できまる．
という２つのことがらを活用します．

どちらも，「mol」で考えています．
物質の量を mol 単位で，Ns と表しましょう．

(a) でいう「一定値」を Vo とあらわしましょう．
それは，
　　Vo = Vs/Ns
ということですから，
　　Ns = Vs/Vo [5]

ここで，Voですが，
　　0℃，１気圧では，22.4 L/mol
　　25℃，１気圧では，24.45 L/mol
です．1 L = 10^-3 m3ですから，
　　Vo = 24.45 x 10^-3 m3/mol
　　　 = 2.445 x 10^-2 [6]

(b) の分子量ですが，これを Ms とあらわしましょう．
　　Ms = Ws/Ns
ですから，
　　Ws = Ns Ms [7]

【4. 換算式】
　　体積濃度 Cv = Vs/Va [2]
　　質量／体積濃度 Cm = Ws/Va [4]
[4]式の Ws に[7]式を代入して，
　　Cm = (Ns Ms)/Va
更に，[5]式を使って，Nsを消します．
　　Cm = (Vs/Vo)(Ms/Va)
少し書き換えて，
　　Cm = (Vs/Va)(Ms/Vo)
[2]式を使って，
　　Cm = Cv (Ms/Vo)
となります．

これで，質量／体積濃度 Cm を
　　体積濃度 Cv
　　溶質特有の分子量 Ms
　　物理定数である Vo
のみで表現することができました

【5. ホルムアルデヒド（以下，"FA" と略します）】
　　Cv = 0.08 ppm = 0.08 x 10^-6
　　Vo = 2.445 x 10^-2 m3/mol
　　Ms = 30.026 g/mol
このことから，
　　Cm = (0.08 x 10^-6) (30.026 g/mol)/(2.445 x 10^-2 m3/mol)
　　　 = 0.9824 x 10^2 x 10^-6 g/m3
10^-6 g は，1μgですから，
　　Cm = 98.24 μg/m3
となります．

【6. パラジクロロベンゼン（以下，"pDCB" と略します）】
pDCB は箪笥の中の虫除けの白い固体，「パラゾール」の主成分です．
つまり，25℃，1気圧で，固体です．
　「そんなものである pDCB が空気の中にありうるのか？」
という質問があるかしもしれませんね．答えは，
　「はい．実際，あります．」
です．pDCB の分子（百万分の１ミリメートル程度の大きさ）が，固体から少し揮発して，空気中を飛び回っています．そして，ときどき，あなたの鼻にも到着．だから，あの独特の匂いがするのですし，揮発性有機化合物（VOC）として問題になるのです．
ですから，箪笥の中の空気は，
　　pDCB の「ガス」と空気との混合ガス
なのです．

さて，
　Cv = 160 ppm = 160 x 10^-6
　Vo = 2.445 x 10^-2 m3/mol
　Ms = 147.00 g/mol
ですから，160 ppmの pDCBを含む空気は，質量／体積濃度では．．．
　Cm = (160 x 10^-6)(147.00 g/mol)/(2.445 x 10^-2 m3/mol)
　 = 9620 x 10^2 x 10^-6 g/m3
= 9.62 x 10^5μg/m3
となります．

これは，0.962 g/m3 です．約 1 gです．結構高濃度ですね．

もしや，160 ppm ではなく，3桁薄い，160 ppb ではありませんか？

【7. VOCの指針】
そもそも，厚生労働省の定めた VOC の室内での指針
<http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/situnai/hyou.html>
では，
　　FA: １００μg／m3（０．０８ppm）
　　pDCB: ２４０μg／m3（０．０４ppm）
です．

ご質問の pDCB の濃度は，この指針のなんと，4千倍です．