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プリンキピアでは遠心力は実在する力?

ニュートンのプリンキピアには、「遠心力は実在する力」だと書かれていると言う人がいますが、本当なのでしょうか?それが本当なら、ニュートン力学の遠心力と矛盾しませんか?ニュートン力学では遠心力は見かけの力だとされています。プリンキピアでは遠心力は実在する力だと書かれているなら、両者は矛盾しませんか?それとも、ニュートン力学とプリンキピアは別物でしょうか? お詳しい方、どうかご教授頂ければ幸いです。

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  • ddtddtddt
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回答No.1

 まず時代背景です。  プリンピキア発表以前に、デカルトは宇宙論を著わしていました。そこに真空という考えはなく、例えば太陽と地球の間の空間は透明な流体(媒質)で満たされ、その中を動く太陽と地球の運動が媒質に渦をつくり、その渦の圧力によって太陽と地球は引き合うようにみえ、それが重力の正体だという事になります。これは、力が伝達されるときには必ず物体の接触がなければならないという日常経験に最も素直に依拠した考えで、当時のヨーロッパの一般教養にまでなりました。  作用の伝達には、押し合いへし合いする何らかの媒体が必須というデカルトの渦動論は、現在では近接作用力の原型とみなされています(例えば電磁力の伝達には電磁場)。しかしこれはニュートンの万有引力の法則とは正反対のものです。何故なら万有引力の法則は、「虚空を越えて瞬時に力が作用する」という遠隔作用力だからです。デカルトの立場では、万有引力は嘘の力、良くて現象論という事になります。  当時ヨーロッパの辺境にすぎなかったイギリスにいたニュートンは、そういう状況を無視できませんでした。それで「万有引力は嘘か/そうでないのか」という議論に巻き込まれないために、プリンピキア冒頭に注意深い但し書きを付けます。 「私が力とか衝撃とか圧力とか言う場合には、それらは全て数学的に考えられたもので、そこでそれらの作用が存在するとか実在するとか言っているのではない」 ・・・と。じっさいプリンピキアの正式名称は「プリンピキア・マセマティカ」(自然哲学の数学的諸原理)です(^^;)。読みようによっては、万有引力も遠心力も、それが存在するとか実在するとかはおいといて、自然現象を妥当に演繹できれば良いだけの数学的便利手段だと読む事も可能です。この流れはマッハの実証主義へとつながっていきますが、逆に言えば、遠心力は実在するともしないとも読める事にもなります(読みようによっては)。  次にニュートンの力学(プリンピキア)と現在のニュートン力学との関係ですが、上記のように曖昧な立場にあったニュートンの力学はその後、啓蒙主義の時代などを経て大半は拡張解釈され、一部は縮小解釈され、19世紀にニュートン力学全盛の時代を迎えます。自然現象は全てに先立ってニュートン力学的でなければならない(電磁気学含む)という、力学的自然観の成立です。よって、ニュートンの力学とニュートン力学は同じではありません。ニュートン力学は後年の人々が時代の要請に従って、時代に制約されながらプリンピキアをいろいろに解釈した集積です。  それから1世紀以上経た現在における遠心力の解釈ですが、ここでは存在と実在を使い分けた方が良いと思われます。遠心力は存在します。それは荷重計で測れる力ですから、現実に存在し作用する力です。ただしその導出過程を追うと、それは回転座標系に運動方程式を変換した時に現れる力なので、幾何学的拘束によって発生する拘束力と本質的に同じというのは、ご存じと思います。現実の発生機構としては回転する円板から受ける拘束力(接触力)なので、その力には発生原因すらありますが、観測系の選択によってあったりなかったりする力でもあります。観測系の選択は人間の自由です。そして自然は人間の自由になりません。  例えば重力は、どのような観測系を選択しようと常に存在します(一般相対性理論は除外!。あくまでニュートン力学の枠内(^^;))。何故ならそれには質量という「力の発生源が実在する」からです。そういう意味で、力の発生源が実在しないという意味で、遠心力は実在しない力、「見かけの力」と呼ばれていると思います。 [参考文献]  重力と力学的世界,山本義隆.

octopass
質問者

お礼

詳細なご解説,大変ありがとうございます.全て,読ませて頂きました.歴史を辿ると,物理学に対する理解が深まりますね!ありがとうございます. 一つだけ気になりましたのが,「遠心力」は実在はしないが存在する,ですが,ということは,「慣性力」も実在はしないが存在はする,ということでよろしいでしょうか? もしよろしければご教授頂ければ幸いです.どうぞ宜しくお願い致します.

その他の回答 (1)

  • ddtddtddt
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回答No.2

#1です。 >・・・「慣性力」も実在はしないが存在はする,・・・?  自分はそういう考えです。けっこう一般的だと思うのですが、遠心力も慣性力(の一種)とけっこう言われてると思います。  特に慣性力:-maは、観測対象である質点と同じ加速度で加速する観測系に移った時に現れる力、という事になります。

octopass
質問者

お礼

ありがとうございます!!遠心力(慣性力)は,「存在する」が「実在する力ではない」というお話を聞いて,すごく納得しました.長年,疑問に思っていたのですが,すっきりしました.他人に説明するときも回答者様から教えていただいたとおりに説明しようと思います.本当にありがとうございました.

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