• ベストアンサー

Geist とSeele

この二つは、日常的・一般的にはどのように区別されているのでしょうか。 辞書では把握しかねて思想事典をざっと見たところ、Seeleの方が、一般的に「心」と呼ぶようなものを含んでいるように見えましたが…… よろしくお願いいたします。

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
回答No.3

これは回答を短くまとめられないので、その点御容赦ください。 日常的、一般的な場面での使い分けということなら、あまり学術的な説明は参考にしない方がよいと思います。哲学、神学、心理学などで Geist と Seele の問題を論じますが、定義は統一されていません。そういった学問を専門的にやるのなら別ですが、日常的な使い方を理解するには却って混乱するだけです。また、「日本語の何に当たるか」というアプローチもよい方法ではありません。特に、日本語の「心」という言葉は意味があまりにも広すぎ、漠然としているので、Geist と Seele の両方の訳語となり得ます。日本語訳との対照は理解の助けにはなりにくいと思います。 学問の各分野でも議論されている通り、Geist と Seele の明確な区別は困難です。日常的な用法のためのごく大雑把な目安としていうなら、一応 Geist は「精神」、Seele は「魂」「心」と考えておけばそれほど大きく間違うことはないかもしれません。SPS700 さんがお書きになっている「Geist は精神的なもの、Seele は感情的なもの」というのも大事な一面で、Seele は「情緒的」と表現してもよいかもしれませんが、しかし Seele の意味はもっと広いので、あくまでもドイツ語として、それぞれの文脈で具合的に何を言っているかを見極めることが大事です。ドイツ語と近い姻戚関係にある英語との間でさえずれがあり、一応 Geist が mind や sprit に、Seele が soul に対応しますが、Seele を mind で訳さなければならないこともあります。 独和辞典には訳語しか載っていないので、ドイツの辞書から意味の説明を少し集めてみます。 Geist -(感じ取る Seele とは対照的に)思考や認識をする人間の意識。知力、理性。 - 明晰さ。才気。機知。エスプリ。 - 信念。(内的、精神的)態度。 Seele - 人間の知覚、感覚、思考を成す総体。プシュケ。 - 心の力、心を動かす能力。 - 人間の、宗教上不死とされ、死後も生き続ける実態を有しない部分。魂。 -(魂を有するという意味から転じたと思われる比喩的用法として)人間。(あるいは単純に)住人。 - 原動力。生命、生気を与える中心。 Geist は、思考や認識などの知的能力による精神的活動力そのもの、あるいはその内容や、それに基づく信念、態度までを表せる語として、「精神」が基本的な直訳になると思います。そして Seele は、このような思考や認識も含め、さらに感覚、知覚、感情、感性なども含めた人間の心的能力全体の「在処」のようなものでしょう。神学には、Geist は Seele の能力の一部という考え方があり、Seele にはほかに「恩寵」「尊厳」「愛」などが備わると考えます。つまり Seele は、動物にはない、人間が人間たる所以となるものでもあるので、日本語の「魂」や「心」に当たる面が大きいでしょう。そして、「肉体のような実態を有しない」という説明が Seele の方にありますが、Geist もその点は同じで両者は重なるので、意味の広い日本語の「心」が Geist、Seele の両方の訳語として使われることになります。 ところで、和独辞典やそれに類する書物で日本語の「心」を含む例文がどのようなドイツ語で訳されているかを見ると、多くの場合、日常的に軽い意味で使われる「心」には Herz を当てています。 彼には花を愛する心がない。 Er hat kein Herz für Blumen. 心から君に感謝している。 Ich bin dir von Herzen dankbar. 彼は心の温かい人だ。 Er ist ein warmherziger Mensch. 彼女は息子の非行に心を痛めている。 Seine Vergehen gingen ihr sehr zu Herzen. ほかのいくつかの和独辞典で「心」の項目を見ても、ほとんどは Herz が当てられています。Seele は、「魂」という訳があることからもわかるように、上記のような例における Herz よりも重い意味ですが、Herz の類義語ではあるので、wie ein Herz und eine Seele「心を合わせて」という成句もあります。また、「仕事に心を込める」という場合などは、Herz ではなく、Ich lege meine ganze Seele in die Arbeit. というような言い方になります。「魂のすべてを込めて、入魂の」=「心を込めて」という意味です。 「心」に関する記事の検索で Geist が出てくるということですが、たとえば日本語版 Wikipedia の「心」の項目を見ると、「心の哲学」というものが出てきます。その項目からドイツ語の Wikipedia のリンクを開くと、Philosophie des Geistes という見出しになっています。そういうところを御覧になっているのでしょうか。Philosophie des Geistes は、「精神哲学」と訳しても間違いではありませんが、あえて「心の哲学」としているのは、ドイツの哲学者、ヘーゲルの「精神哲学(精神現象学)」と区別する必要があったからではないかと思います。ここで「心の哲学」とされているものは、個々の人間の精神が考察対象ですが、ヘーゲルは、「世界史のうちに働いている超越的な精神」を論じているからです。ドイツ語ではどちらも Geist です。そして、Philosophie des Geistes の解説の冒頭に、「心身二元論」の表現として、Leib-Seele-Problem(肉と魂の問題)と Körper-Geist-Problem(身体と精神の問題)の両方が挙げられていますが、Seele には「魂」の意味が、Geist にも「霊魂」の意味があるので、ここでは同義のように使われています。キリスト教の神学では Geist と Seele を区別すべきという論がよくみられますが、これは聖書の文言の解釈とか神との関係とかの話になるので、日常的なドイツ語の使い方の参考にはならないでしょう。 ということで、実際の用例を当たってみるしかありません。まずは Geist の例から。 ALSに罹った科学者、スティーヴン・ホーキングに関する文。 Sein Körper baute zusehends ab, aber sein Geist blühte umso mehr auf. 彼の体は目に見えて衰えたが、精神はそれだけいっそう花開いた。 (このあとに業績の話が続くので、「心」という訳ではおかしい) Reisen veredelt den Geist und räumt mit unseren Vorurteilen auf. 旅は精神を高め、私たちの先入観を一掃してくれる。 (「心」と訳せないとは言えませんが、「先入観」という語との関連から、この場合はやはり「精神」と訳したいところです) Reisen ist allgemein immer sehr stressig für meinen Körper und Geist. 旅はだいたいいつも私の心身には大変なストレスになる。 (Körper und Geist は決まった言い回しの一つで、このような単純な内容の文ならば「体と心」でよいと思います) Im Geist war ich immer bei dir. 心の中では私はいつも君のそばにいた。 (この場合は「精神」と訳すのは無理です) Die erste echte Demokratie ist unzweifelhaft ganz wesentlich aus dem Geist des Christentums geboren. 最初の純粋な民主主義は、疑いなく全く本質的にキリスト教の精神から生まれた。 (この場合は「精神」としか訳せません) Es ist offensichtlich, dass Facebook diesen Geist des Datenschutzes missachtet. フェイスブックがこの情報保護の精神を無視したことは明らかである。 (この場合の「精神」も疑問の余地はないと思います) Der menschliche Geist begreift die Wurzel, indem er das Verhältnis zum Quadrat der Wurzel erkennt. 人間の知力は、根と2乗の関係を認識することで、根(の意味)を理解する。 (この文の Geist は、「心」と訳せないことはすぐわかりますが、「精神」という訳も合いません) 複合語の例を一つ上げると、Handwerkergeist という語は、直訳すると「職人の精神」です。仕事に際しては技を尽くし妥協しない、というような精神、信念、態度のようなものですが、日本語では「職人気質(かたぎ)」とも言えますし、「職人魂」と言うこともできます。日本語の「魂」はこういう「精神」と同義でも使えるので、この場合の「魂」は Seele とは違う意味です。 ここで字数オーバーです。続きの回答を別に送ります。

noname#239538
質問者

お礼

大変丁寧なご回答ありがとうございます。 確かに、なじみがある語としてHerzを忘れてはいけませんでした。 例文を拝見していますが、難しいですね…。

その他の回答 (3)

回答No.4

続きです。 次は Seele の使用例ですが、ここでは訳語がさらに問題となります。「心」と同様、「精神」という日本語の意味も広く曖昧で、Seele はどちらに訳してもよい場合が多いです。辞書には Leib und Seele という慣用句が出ていて、「体と心」「肉体と精神」の両方の訳語が並んでいます。もちろんこの場合、Seele は Geist が示すような「精神」ではありませんが、国語辞典を引けば分かるように、日本語の「精神」には「心」「魂」の意味もあるので、すでに日本語に訳してあるものは、原文が Geist なのか Seele なのかも容易に推測できません。なお、Seele が使われている例文には、Leib und Seele, Körper und Seele, aus der Seele などの慣用句が使われているものが非常に多くみられます。 Je länger die Sucht anhält, desto mehr zerstört sie Körper und Seele. 依存が長くなるほど体と心(肉体と精神)が壊される。 (アルコールの害について述べた記事の中の文です) Sie ist mit Leib und Seele Krankenschwester. 彼女は看護婦の仕事にすっかり打ち込んでいる。 (<「体も心も看護婦である」「全身全霊を傾けて看護婦をしている」) Seine Krimis spiegeln die Seele Griechenlands, sie erzählen auch von der Zerrissenheit der Hauptstadt. 彼の推理小説はギリシャの魂を写し出しており、首都の分裂をも物語る。 Musik wäscht die Seele vom Staub des Alltags rein. 音楽は、日常の汚れから心を洗い清めてくれる。 Gemeinsames Singen ist Wellness für Körper, Geist und Seele und ein toller Ausgleich zum stressigen Berufsleben und Alltag. 人と一緒に歌うことは、体、精神、心の健康であり、ストレスの多い仕事や日常に対する素晴らしい補いとなる。 (Geist と Seele の両方が並んでいる場合は、Geist は頭を使って考える「心の働き」の面、Seele は、いらいらしているとか穏やかであるとかの「心的状態」の面と考えればよいと思います) なお、SPS700さんが紹介しておられるバッハのカンタータの歌詞では、Geist と Seele が同義語として並列されているだけのようなので、これは単なる修辞的な定型表現と思われます。 まだ疑問は残ると思いますが、それぞれの語の意味の核を常に意識しながらたくさんの例に当たり、感覚的にとらえていくよりほかないと思います。

noname#239538
質問者

お礼

先の回答に加えて、お礼申し上げます。

  • SPS700
  • ベストアンサー率46% (15297/33016)
回答No.2

 #1です。補足です。 >>例としてお出しになったのは、どういう場面・文脈で使われている表現ですか?  下記のような場合です。  https://www.google.com/search?q=k%C3%B6rper+geist+und+seele&tbm=isch&source=univ&client=firefox-b-1-d&sa=X&ved=2ahUKEwia1fGE2_TkAhVLA6wKHdfvApoQsAR6BAgDEAE&biw=1920&bih=852  また、下記のような表現からも別れてはいるが相補うという考えが見て取れると思いました。  https://www.youtube.com/watch?v=oMclNxEre2M

noname#239538
質問者

お礼

ありがとうございます。

  • SPS700
  • ベストアンサー率46% (15297/33016)
回答No.1

1。この二つは、日常的・一般的にはどのように区別されているのでしょうか。  Körper, Geist und Seele という表現がありますから区別はあると思います。 2。日本語のような、体と心、の二分制の言葉で、三分制の説明や理解は難しいと思います。おっしゃる通り「こころ」の二面を見る必要がありそうです。  Geist は「精神的なもの」 Seele は「感情的なもの」というのもぴったり来ないし、困りましたね。識者の方に譲ります。  

noname#239538
質問者

お礼

ありがとうございます。 例としてお出しになったのは、どういう場面・文脈で使われている表現ですか?

noname#239538
質問者

補足

心と呼ばれるようなことに関係する学術分野のWikipedia記事をいくつか参照しているのですが、 思っていたたよりGeistというワードが検索に引っかかるのが気になりました。 (十分に精読できていないため中身次第ではあるとはいえ)今のぼんやりしたイメージ通りなら、もし現代思想の解説割合が少ないとしても、Seeleという語がもう少し使われているのでは…と思ったのですが。 日常表現とは関係ないかもしれませんが、この路線で引き続き調べてみます。 ご回答ありがとうございました。

関連するQ&A