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焼き戻しと二次硬化について
- 焼き戻しが進行するとセメンタイトが凝集して大きくなり、軟化するという説明があります。しかし、セメンタイトは硬いものであるため、なぜ大きくなるというのでしょうか?
- 焼き戻しによる二次硬化は、400℃から650℃の温度範囲で発生します。炭化物析出により二次硬化が起こるという説明と、炭化物生成元素のモリブデン、バナジウム、タングステン、ニオブ、タンタル、チタンなどがセメンタイトに固溶しにくく、2次硬化を起こすという説明があります。
- 二次硬化は特定の鋼に関して起こる現象です。鋼材の組成や熱処理条件によって二次硬化の発生や程度が変化します。
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?について 鋼の強化機構の一つとして析出硬化というものがあります。構造用鋼で は焼戻しによりセメンタイトが析出して析出硬化を起こします。ご質問の 通り焼戻し温度の上昇に従いセメンタイトが成長し大きくなっていきます。 析出硬化では、析出物が細かく多いほど硬化量は大きくなります。その 機構については、「析出硬化」で検索すれば、多分いろいろと出てくると思 いますので、それで勉強して下さい。この機構により析出炭化物の成長に 従って、硬さは低下していきます。 ?について ご質問のようにセメンタイトとは基本的にはFe3Cですが、Feの部分に他 の炭化物生成元素が置換してM3Cの形態になり、Fe3Cよりも硬さが少し高 くなります。しかしその置換量はわずかなものです。置換できる量以上の 元素量を含有する鋼では、炭化物生成元素はセメンタイトに入りきれず、 独自の種類の炭化物(特殊炭化物)として析出します。これにより例えば同 じ炭素量で比較すると、SCよりもSCMの方が焼戻し温度の上昇による硬さ低 下量は小さくなり、これを焼戻し軟化抵抗と呼びます。 ご質問に対する答えとしては、「合金元素のうちFeよりも炭素との結合力 が強い元素、つまり炭化物生成元素は、少量ならばセメンタイト中に固溶す るものの、それ以上の量になると特殊炭化物として析出する。一方Feよりも 炭素との結合力が弱い元素(NiやCuなど)はセメンタイトには入らず、特殊炭 化物を生成することもなく、基地に固溶する」となります。「セメンタイト に固溶しにくい元素は特殊炭化物を形成する」と言うと少し正確ではありま せん。 ?について 炭化物生成元素の量が増えると、セメンタイトの成長による軟化よりも 特殊炭化物の析出による硬化の方が大きくなり、これが2次硬化となりま す。C量との兼ね合いもあり、炭化物生成元素の量だけでは明言できませ んが、Cr単独の場合では軸受鋼レベルのCr量ではまだ不足ですが、SUS420J2 レベルのCr量で2次硬化が明瞭になります。またCr-Mo複合ならば、SKD61 やSKD11で2次硬化が明瞭になります。さらに高速度工具鋼ではさらにWに よる2次硬化も出てきます。 つまり2次硬化は、ある程度以上の量の炭化物生成元素を含有した鋼で 認められるものです。
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鋼が硬くなるという現象は、鉄原子の結晶格子の間に、[C]や[P]の軽元素(侵入方元素)が挟まったり、[Mo],[Ni],[Mn]などの置換型元素が鉄格子点を占拠して結晶を歪ませる事から生じると考えてください。 セメンタイトが凝集するという事は、マトリックス全体に分布して多くの結晶格子に挟まっていた炭素原子が特定の範囲に拡散・凝集することになるので、やわらかいフェライト相の比率が増え、全体として軟化します。 また、炭化物生成元素の多くは置換型、ないし侵入型であっても原子半径が大きく拡散し難い元素ですから、それが炭化物になってもマトリックスに分散したした形になるので、周辺の鉄格子を更に歪ませたり、転位を引っ掛けたりする(転位の動きを止める)ので、強度が上がった形になります。これが2次硬化です。 文章の中で、転位と云う馴染みのない用語を使いましたが、金属が変形する時結晶を構成する金属原子が、パチンコ球がずれるように動きます。このずれを転位と呼びます。
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ありがとうございます。セメンタイトの凝集の意味、鋼が硬くなるメカニズムよくわかりました。
お礼
私の拙い質問を ご丁寧に解答いただきありがとうございました。よく理解できました。