「入力インピーダンスが高いほど良い」、「出力インピーダンスが低いほど良い」と言うのは、扱っている電力が回路のノイズよりずっと大きくて、機器を結ぶ信号線の長さが扱う信号の波長(周波数の逆数)よりずっと短い場合だけです。
テレビ放送などの放送電波を受信する時にアンテナから得られる電力はごくわずかです。
例えば、BSアンテナから得られる電圧は数10uV(75Ω)です。
例えば、40uV(75Ω)電力に換算すると0.021nWです。
一方で、放送を受信する受信回路はそれ自身でノイズを発生しています。
(アナログテレビで放送終了後に見える砂の嵐や、AM放送の同調ズレ時のザーという音がノイズ)
アンテナからの電力が回路のノイズより十分大きくなければノイズに負けてしまいます。
そこで、アンテナからの電力を残らず回路に取り込む必要が有ります。
その為に必要なのが第1の「インピーダンスマッチング」です。
例えば、電圧が2Vで内部抵抗が10Ωの電池が有ったとして、
100Ωの抵抗をつないだ時に抵抗に流れる電流は2/110=0.0182Aなので消費電力は(2/110)^2×100=0.033W
1Ωの抵抗をつないだ時に抵抗に流れる電流は2/11=0.182Aなので消費電力は(2/11)^2×1=0.033W
10Ωの抵抗をつないだ時に抵抗に流れる電流は2/20=0.100Aなので消費電力は(2/20)^2×20=0.1W
電池の内部抵抗と同じ10Ωの抵抗を付けた時に負荷抵抗での電力が最大になります。
機器を結ぶ信号線の長さが扱う信号の波長(周波数の逆数)よりずっと短かくない場合です。
地上デジタルTVは470~770MHzの周波数を使用しています。
波長に直すと0.638~0.390メートルです。当然、アンテナとテレビの距離は波長より長くなります。
この場合、適当な電線を使う訳にはいきません。その為、特性インピーダンス75Ωの同軸ケーブルを使います。
このケーブルの75Ωと言うのはテスターでは測定できません。
ネットワークアナライザ等の測定器を使用します。
この様なケーブルを使用する場合、ケーブルに接続する機器の入力/出力インピーダンスをケーブルの特性インピーダンスに合わせる必要が有ります。(第2のインピーダンスマッチング)
なぜ必要かの説明かはここでは省きます。
なぜ、75Ωなのかはこちらを見てください。
http://okwave.jp/answer/new?qid=8246026
オーディオ機器などでは、取り扱う周波数は通常最大20kHzなので波長は15メートルです。
家庭で使用する場合は第2のインピーダンスマッチングは重要では有りません。
ただし、音楽スタジオや放送局などではケーブルの長さが数10メートルになる事が有ります。
その為、プロ用のオーディオ機器には特性インピーダンス600Ωのケーブルが使用されています。
600Ωなのは損失を最小にする必要が無いのと、回路の使いやすさが理由です。
オーディオ機器での第1のインピーダンスマッチングについては、普通は機器が出力する電力に余裕があるので気にする必要が無いのです。
昔のレコードプレーヤーのMC(ムービング・コイル)ピックアップは発生する電力がごくわずかでインピーダンスも極めて低い為、トランスを使ってインピーダンスを上げていました。
(第1のインピーダンスマッチング)
あなたの思ったこと、知っていることをここにコメントしてみましょう。