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高エネルギー電子線の人体における入表面線量
現在、放射線に関する勉強中です。 以下につて是非教えてください。 高エネルギー電子線を人体に照射して治療する場合、 エネルギーが高いほど入射表面線量は低くなりますでしょうか? 是非お願いします。理由もご存知でしたらお願いします。
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ご質問の「入射表面線量」という物理量は、どのようなものでしょうか。 放射線を勉強中の方には「釈迦に説法」だと思いますが、放射線の強さを表す量には下記のものがあります。 ・放射線を出す量:ベクレル=1秒間に1個の原子核が崩壊して出す放射線が1ベクレル。 電子線の場合は、原子核がベータ崩壊して電子(ベータ線)を1個放出するのと同じと考えれば、電子線の1秒間の電子の数がベクレルに相当すると思います。従って、これは電子線のエネルギーには依存しません。 ・放射線が対象物にエネルギーを与える量(吸収線量):グレイ(=ジュール/kg)。電子線によって対象物に与えられるエネルギーの量に相当しますので、電子の数とエネルギーとに依存します。 ・放射線が生体に与える影響を加味した被ばく量(等価線量、実効線量):シーベルト。吸収線量(グレイ)に放射線の種類や生体の感受性を加味した計数をかけて算出します。ベースが「吸収線量(グレイ)」ですので、電子線の電子の数とエネルギーとに依存します。 このうち、どれをとっても「エネルギーが高いほど低くなる放射線量」となるものは存在しないと思います。 「エネルギーが高いほど透過しやすい」(ということは電離などの相互作用が少ない)という効果は存在すると思いますが、電子線は電荷を持つがゆえに、物質中の透過性はそれほど高くありません(一般に、ベータ線は暑さ1mmのアルミ板、厚さ1cmのプラスチック程度で完全に止まると言われています)。特に生体を考えた場合、ベータ線/電子線では生体の厚さでほぼ全エネルギーを与えますので、エネルギーが高いほど吸収線量・実効線量とも大きくなると思います。 ただし、下記のサイトにあるように、エネルギーによって生体に対するエネルギー付与の「深さ方向の分布」は変わるようです。エネルギーが高くなると、皮膚表面から内側にエネルギー付与が最大となる部分ができるようです。 ↓ http://ha2.seikyou.ne.jp/home/Takehito.Senga/geocity/ebintro2.html 質問者さんが言いたいのは、この「エネルギー付与の分布」で、生体表面では最大値に対して小さくなるということですか? 電子線の場合、この効果はあまり期待できないと思いますが、最近脚光を浴びている「重粒子線によるがん治療」などでは、この効果を利用しているようですね。「エネルギー付与の最大値」をがん部分に正確に持ってくることで、正常部位へのダメージを少なくしているようです。おそらく、生体内で相互作用(電離)する相手は主に電子であることから、重粒子は質量が圧倒的に大きいので電子線に比べて散乱されにくいため、がん部位に正確に照射でき、かつ停止深さを制御しやすい、ということなのだと思います。 ↓ http://www.hibmc.shingu.hyogo.jp/ionbeam_treatment3.html ただ、この場合でも「入射表面線量が低くなる」というような言い方はしていないと思います。 お答えになっているかどうか分かりませんが、ご参考まで。
お礼
解答ありがとうございました。 書かれてありましたように、エネルギーが高くなるほど線量分布はMaxが深部へと移行しますが、その分皮膚表面の影響は少ないのかなという思いでした。 参考になりました。 ありがとうございました。