部位カテゴリー間の限定は弱い限定か
以前から問題意識を持っている英文で次のようなものがあります。
A: He took me by the arm.
B: He patted me on the shoulder.
C: He looked me in the eye.
A,B,Cのそれぞれにおいて、場所を表す前置詞の後に定冠詞と部位の表現が続いています。ところが、armもshoulderもeyeももともと二つ存在するものなのにaがついていません。また、二つ存在するうちの一方が特定される場面でもないのにtheがついています。これはどういうわけでしょうか。
私の説明を提示します。おかしいと思うことがあればご指摘下さい。説明の際は、話を簡単にするためにAだけを取り上げます。
おそらく暗黙の前提として、armには不可視のof the bodyという限定がかかっていると思います。bodyはmind又はsoulとセットになって枠組みを構成するものですが、文中で使われる時はtheがつきます(枠組みを構成するデフォルト要素だから、あるいはもう一つの要素との対立関係から特定化されるため)。
bodyを上位概念としたときの下位概念として存在するのが部位だと思います。部位は通常はA,B,Cなどのような文において、場所を表す前置詞(in, on, byなど)と共に使われることが多いようです。それ以外の位置でも使われます。
Aにおいてはarmが部位としてとらえられていて、実物(右肩と左肩)の存在は考慮に入れられていません。聞き手にとってどの部位なのかがわかればいいのであって、部位のうちのどちら側かは関心の対象にならないためにAのような構文が使われたとのだと思います。
部位という概念的な言い方を避けてカテゴリーの成員(実物・外延)を文中で表そうとすれば、場所を表す前置詞句以外の語句内で使われるようです。例えば、A: He took me by the arm. はHe took my arm(s). と言えます。
次に定冠詞が使われる理由を挙げます。可視化されないof the bodyは下位概念であるarmというカテゴリーを限定することはあっても、armというカテゴリーの成員(実物)を直接限定することはないと思います。各部位はof the bodyによる限定によって一つに決まるので定冠詞がつきます。
部位は、head, shoulder, arm, hand, neck, foot, leg, など----内蔵器官も含めるとたくさんありますが、部位の集合要素のうちでarmはデフォルト要素として特定のものであるからという理由でtheがつくとも言えそうですが、これは<各部位はof the bodyによる限定によって一つに決まる>を言いかえたものにすぎません。
さて、本題に入ります。Aのthe armは可視化されないof the bodyによって限定されています。この時の限定は、the (right) arm he broke last yearにおける関係詞節による限定より弱いと言えそうな気がしますがどうなのでしょうか。関係詞節による限定は外延(部位というカテゴリーの成員)に対するものです。of the bodyによる限定は部位(カテゴリー)に対するものです。
つまり、限定の強さは、カテゴリーの成員に対する時の方が、カテゴリーそのものに対する時より大きいと言えるのかというのが私が知ろうとしていることです(もしかしたら限定の強さというより、限定の深さあるいは指示対象に対する拘束力の強さと言うべきなのかも知れません)。
もしかすると、部位(カテゴリー)に対するof the bodyによる限定とカテゴリー成員に対する(関係詞節などによる)限定はそもそも位相の異なるものなので、両者の限定力の強さを比べることにそもそも意味がないのでしょうか。ご意見をお聞かせ下さい。
お礼
ありがとうございます。 確かに読みすぎかもしれませんね。 ただ、それにしても不自然です。うーむ。