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トンボ型の紙飛行機の飛び方について
トンボ型に作った紙飛行機がよく飛ぶという話を聞きましたが、尾翼は全くないにもかかわらず、安定して飛ぶことに驚きました。主翼に相当するものが前後二枚あることで尾翼がないことが補われているのかと思いましたが、前後に分けなくても結構安定して飛ぶようです。実際のトンボの飛行術は実に洗練されているように思われますが、飛行体としてのトンボの構造は航空力学的にはどのように解釈できるのでしょうか。
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>飛行体としてのトンボの構造は航空力学的にはどのように解釈 難しいご質問です。一般的な航空力学の位置をはっきりさせておくと、 有人実機の飛行を理論体系にすること、これは具体的には、その性格からして レイノルズ数が10の6~8乗オーダーの領域のサイズと速度を取り上げている こと、そして固定された構造であって、飛行機であれば揚力発生と推力発生は 分離した存在が当然であること、等が前提になった話なので「生物」のような 「可変する主翼で揚力も推力も同時に発生し、かつ動的な安定制御もする」 存在は例えば産業図書「航空力学の基礎」の様な航空力学書でも一切触れられ ません。また同時に低レイノルズ数領域(10の4~5乗)の模型飛行機の事も、 この領域では平板翼の方が良いということも触れられません。 これらは応用・発展させた別分野になっているのが現状です。 当初のご質問に答えるためには、生物の飛翔を研究し、それに航空力学的 裏づけをしている人しか知識がありません。そしてそれは恐らくこの様な 限られた場では表現不可能な量の基礎知識と解説が必要です。 (今の「航空機」に対してでも、「航空力学的にどうなの」という質問に は「航空力学書で勉強して下さい」が多分最も正確な答えで、質問者の 知識も解らないまま、その全てを記述することはまず不可能です。) ただ申し上げたいのは紙飛行機も含め「固定構造の模型」にした時点で 「生物」とは違っていることです。例えばスズメは弾道飛行を繰り返して いて、「滑空」能力があまりありません。模型サイズでは15cmほどで 30gというのは紙飛行機とでも比較すれば相当重く、このまま実寸で 模型化してもほぼ飛ばない、ということは明白です。これは「固定翼機」 として考えることは出来ない、ということです。 また、滑空する猛禽類を見ても、彼らには「垂直尾翼」がありません。 しかし、尾を傾けて代用し何不自由なく安定飛行します。これも固定の 構造模型では再現出来ず、センサー制御した安定装置の付加が要ります。 トンボの紙飛行機でも、3軸安定は構造そのものが空力的に安定する ものでなければならない筈で、これはすでに生きたトンボの飛行とは 異なっていると思います。生物はもともと構造として空力的に不安定 でも飛べます。これは人間も意識がある状態で重心を無意識に制御して 直立しているのであって、「構造的に」直立安定してはいないのと 同じです。 航空機でも後退翼の旅客機は全て「ヨーダンパー」を持っています。 これを常時働かせるないとダッチロールが起こります。模型分野でも 急速にセンサー類を使った安定装置が普及し、従来操縦のみの安定操作 では不可能に近いものでも飛びます。一例では、私も持っていますが、 流行っている「マルチコプター」も安定機能無しではまず飛ばせません。 こうした安定機能は「生物」の方に近づいていると思います。自動車 でも路面や状況でトルク配分して旋回する等は近いものがあると思います。 「ウィングレット」も当たり前の様に近年の旅客機にはついていますが、 手を広げたような翼端で誘導抗力を減らすということは、「鳥」は恐らく 数千万年以上前(正確には知りませんが)からしています。形状は 違いますが、同じ目的を持つものを今になって人間の方が獲得している、 大分遅れてようやく追いついて来ている例と言えるかと思います。 これは以前トンボ型飛行機の話題に回答した例です。 http://okwave.jp/qa/q5955325.html http://okwave.jp/qa/q7060141.html
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映画「風の谷のナウシカ」に出て来た、ナウシカが愛用するメーヴェという尾翼の無い飛行機があります。ナウシカが操縦すると、トンボに似ていますが、1枚翼です。 これを真面目に検討した論文があります。 http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/AA11868267/13482084_55_299.pdf 改良すれば飛べる、ということですね。 飛行機では、無尾翼機の歴史は意外に古くからあり、全翼機へ発展したりもしています。安定性などの困難はありますが、それなりにメリットはあるんですね。 御巣鷹山に墜落事故となった日本航空123便も、尾翼による制御ができなくなっても、長時間をかなり安定して飛び続けることができていました(1985年)。 このことが教訓となり、同様の事態となったユナイテッド航空232便不時着事故(1989年)では、偶然ですが尾翼喪失時の対応を研究してパイロットが乗り合わせていて、死傷者を出さずに生還を果たしました。 こうしたことは、航空機設計者や操縦者を含めた専門家が必死になって研究して、ようやくできていることなので、簡単ではないようです。しかし、飛ぶために生まれてきた生物は楽々とやっているように見えます。 生物模倣などと称する、生物を真似てみて新技術を生み出すことが盛んになってきています。航空機の安全性を含めた性能向上のためには、トンボなどから学ぶということも、なされるかもしれません。
お礼
大変ためになるご教示をいただきありがとうございました。いろいろ試してみたいと思います。関連した航空機事故に関するお話も印象的でした。
お礼
ご丁寧に説明いただきありがとうございました。航空力学的に・・と書いたのは専門家はトンボがよく飛ぶ理由を熟知しているのかもしれないという想像からです。おかげさまで問題の本質がずいぶんよく納得できました。