タイムマシンものには大別して2つの考え方があります。
1)1元時空
時空はひとつしかなく、タイムマシンはその時空内で異なる時間軸に異動する道具である。
2)多元時空
時空がタマネギの様にたくさん(無限)にある。今存在する時空はただひとつしかなく、その時空間で時間軸を移動する手段は存在しない。タイムマシンは、異なる時空間(違うタマネギの層)に移動するための装置。
自分より過去(内側のタマネギの層)の未来を自分のいた層と異なる未来にすることは可能だが、いったん決定した自分の時空の未来は変更できない。
タイムマシンといえば「ドラえもん」ですが、これは1)の立場を取っています。1元時空では時代考証が極めて難しく、つじつまを合わせるのが大変です。
ドラえもんでは、全部のストーリーではどうか知らないですが、ひとつの長編映画内などでは見事につじつまが合っています。
「ターミネーター」なのですが、初作では1元時空の立場を取っていたように思われます。しかし、ターミネーター2を作るにあたって多元時空の立場に変更したようなフシがあります。というのも、1元時空の立場であればスカイネットがなくなるとジョン=コナーは消滅するからです(ジョン=コナーの父親は未来からきた戦士でしたが、スカイネットがなくなると反乱軍もなくなり、ジョン=コナーの父親は過去にこないからジョン=コナーは存在しなかったことになる)。
多元時空といえば「ドラゴンボール」です。引用が漫画ばかりで申し訳ないのですが。ドラゴンボールでは、作中ではっきり多元時空であることを言っています。未来からきたトランクスは、別時空のトランクスですから、現時空(作中で描かれてきた時空)の未来を変えても何のトクも無いのですが「ひとつくらい幸せな未来のある時空があってもいいと思って来た」と明言しているからです。
ターミネーターも、明言はしてませんが多元時空だったんでしょうね。
で、多元時空であっても未来の向かおうとするベクトルは、小さくは変えられても大きくは変えられないというのがターミネーターのスタンスのようです(時空は異なるが、その大きな方向性は未来からの多少の干渉では変わらない)。
例えば、朝おきる時間くらいは変えられるけど、「言語が発明される」とか「インターネットが発明される」とか言った大きな変化(どれくらいが大きな変化かは知りませんが)は変えられない。大きな変化はそれだけ大きな慣性をもっている、ということなんでしょうね。
で、「スカイネットができる」というのはそれだけ大きな慣性をもった出来事だったため、ターミネーター2でサイバーダイン社を破壊したくらいのバイアスで変更することはできなかった(正確には、完成する時期を遅らせるにとどまった)。で、サイバーダインの持っていたノウハウの一部は空軍に引き継がれ、完成するというシナリオに変わった。
もっとバリバリにバイアスをかければ完全に変更することも可能かもしれないのでしょうが、当然慣性の大きな者を変更するのには抵抗が伴います。この抵抗が、スカイネットが送り込んできた抹殺者=ターミネーター(今回はT-X)という形であらわれているのではないでしょうか。
ジョン=コナーが生き残るというのもかなり大きな慣性を持ったことなので、T-Xも簡単には彼を殺せない。
そう考えると初作でスカイネットがターミネーターを過去に送り込んだのは「一元時空と思ってたら、多元時空やったぁ!」ということだったんでしょう。なにせ、たとえジョン=コナーを殺せたとしても自分たちの時空には何の変化も無いんですから・・・。
となると、ターミネーター3でT-Xを送り込んだのもやっぱり「一元時空と思ってたら、多元時空やったぁ!」でしょうね。ターミネーター2で若干シナリオの変わった未来のスカイネットが送り込んだんでしょう。この「若干未来の変わった時空」の人は、初作で「一元時空と思ってたら、多元時空やったぁ!」の失敗をしていることは知りえませんから・・・。多分、この時空のスカイネットがターミネーターを過去に送ったのはこれが初めてと思われます。
そう考えると、作中で多元時空であることを明言していないことに説明がつきます。