• ベストアンサー

無限に深い井戸型ポテンシャルについて

無限に深い井戸型ポテンシャルについて、GaNの層厚d=0.5nm、伝導帯電子の有効質量me=0.2m0の とき (1)基底状態、第一励起状態および第二励起状態のエネルギー固有値E1,E2,E3をeVの単位であらわすとどうなるのですか? (2)GaNの伝導帯の3次元状態密度および、この問題のような2次元の状態密度を計算した場合の状態密度とエネルギーの関係はどうなるのでしょうか? 自分で勉強してみたものの、無限に深い井戸型ポテンシャルだけは良くわかりません。どなたか教えていただけるとさいわいです。

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
  • Umada
  • ベストアンサー率83% (1169/1405)
回答No.1

(1)「井戸の壁の高さが無限大」から言えることは、「壁面において波動関数の値はゼロでなくてはならない」です。これが計算の過程において境界条件として課されます。 ご質問の場合の量子井戸内の波動関数は以下のようになります。左側の壁をx=0の原点に取り、また井戸の壁を太線(┃)で示しています。図示の制約から正確には描けませんが雰囲気は分かっていただけると思います。古典的な振動のイメージで言うならば「壁面の位置と振動の節が一致している」ということです。 [基底状態] ・      ・ :↑波動関数 : ┃      ┃ ┃  __  ┃ ┃ /  \ ┃  ┃/    \┃←壁の位置では波動関数ψ=0 ┃      ┃ x=0     x=d [第一励起状態] ・      ・ :      : ┃      ┃ ┃ _    ┃ ┃/ \   ┃←壁の位置では波動関数ψ=0 ┃   \ /┃ ┃     ̄ ┃       [第二励起状態] ・      ・ :      : ┃      ┃ ┃      ┃ ┃/\  /\┃←これまた、壁の位置では波動関数ψ=0 ┃  \/  ┃ ┃      ┃ 井戸内部における、定常状態のSchroedinger方程式は (h~^2/2m_e)(d^2/dx^2)ψ+Eψ=0  (1) です。ψは波動関数、h~はhバー(Planck定数÷2π)です。また「m×e」との混乱を避けるため有効質量はmeでなくm_eと表記しました。 この方程式は2階線形の斉次微分方程式ですから ψ=A1 sin(kx) + A2 cos(kx)  (2) の形の解となることは自明です。ここにkは{√(2m_e E)}/h~です。またx=0でψ=0との境界条件がありますからA2=0もすぐに分かります。 さてもう一つの境界条件、x=dでψ=0を検討します。これは(2)にx=dを代入することで d×{√(2m_e E)}/h~=π, 2π, 3π,...,nπ  (3) とすぐに書き換えられます。 (3)をエネルギーEの式に変形すると E=n^2 {(h~π^2}/2m_e d^2  n=1,2,3,...  (4) ということになります。エネルギーEはnに応じてとびとびの値しか許されないことが分かります。 題意から、n=1が基底状態、n=2が第一励起状態、n=3が第二励起状態に相当します。数字を代入して計算するのはセルフサービスでいいですよね。m_eをkg単位、h~をJ・s単位で代入したならば最終結果はJ単位で出てきますから、電荷素量で除して電子ボルトの単位に直すのをお忘れなく。 (2)これも上記と同様に考えることができます。 3次元の大きな直方体の箱を考えて下さい。各辺の長さをL_x, L_y, L_zとします。この箱の中に電子が存在するとしましょう。箱の内部ではポテンシャルは一様でゼロとし、箱の外ではポテンシャルは∞とします。従って箱の内壁面において電子の波動関数ψが0という境界条件が課されます。 (1)では電子の運動は1次元(1自由度)で考えましたが、今度は3次元で考えなくてはなりません。3次元空間のSchroedinger方程式(定常状態)は箱の内部においては (h~^2/2m_e)(∇^2)ψ+Eψ=0  (5) となります。∇^2はラプラシアンです。この方程式はψを変数分離(ψ=X(x)×Y(y)×Z(z))して解くのが常道です。解き方は量子力学の初歩の教科書には大抵載っていますから、詳細はそちらで読んで下さい。 計算結果だけ示しますと、やはりこの場合もエネルギーEの値はとびとびのものに限られ、その値は E=(h~^2/2m_e)×{(πn_x/L_x)^2 +(πn_y/L_y)^2 +(πn_z/L_z)^2}  (6) となります。n_x, n_y, n_zは整数で1,2,3,..の値を取ります。これは(4)と同じことで各壁面でψ=0という境界条件が課されるところから生じていますが、今度はx, y, zの3方向ありますからある一つの状態を表現するには整数の3つ組が必要、ということです。 ではいよいよ状態密度Z(E)、すなわち単位体積・単位エネルギー領域で収容できる電子数について考えてみます。 まず波数という物理量を導入します。一般にある波動があった場合、その波長λに対し2π/λという物理量を考え「波数」と呼びます。長さ方向にどれくらい波が詰まっているかを表す量です。 今考えている箱の中の波動関数で、例えばL_x/n_xは半波長に相当する量ですから、この場合の波数(x方向の波数)はπn_x/L_xということになります。同様にy方向についてπn_y/L_y、z方向についてπn_z/L_zがそれぞれ波数です。 波数はx, y, zの各方向についてk_x, k_y, k_zなどと表され、また(k_x, k_y, k_z)のように3つ組にしたものは「波数ベクトル」と呼ばれます。 波数を用いると(6)は E=(h~^2/2m_e)×{k_x^2 +k_y^2 +k_z^2}  (7) と変形できます。この式は波数とエネルギーの関係を表すものです。また波数を変数と考えると(7)は波数空間(3次元)での球面の式を表していることになります。(ただし定常状態となり得る波数がπ/L_xなどの整数倍、すなわち格子点に限られることは変わりありません) これを知った上でエネルギーEとE+dEの間にある状態数Z(E)dEを考えてみましょう。 さてまず(7)で示したように等エネルギー面は波数空間で球面をなします。半径{√(2m_e E)}/h~の球と、半径[√{2m_e (E+dE)]/h~の球の間の体積差を考えると [{√(2m_e)}/h~]^3 (4π/3){(E+dE)^(3/2)-E^(3/2)}  (8) ですが、dEはEに比べて十分に小さいので [{√(2m_e)}/h~]^3 (4π/3){(3/2)√E dE} =2π[{√(2m_e)}/h~]^3 √E dE  (9) となります。 一方、許される波数は波数空間で格子点として存在しています。その密度は波数空間の体積π/L_x×π/L_y×π/L_zあたりに1つですが、1つの準位に電子は2つまで入れますから電子の状態数にするには2を掛けます。 これを(9)にかけると、 2×(L_x×L_y×L_z)÷π^3×2π[{√(2m_e)}/h~]^3 √E dE =(L_x×L_y×L_z)×4√(2m_e) √E÷(π^2×h~^3) dE  (10) を得ます。n_x, n_y, n_zは正の値に限られますので、(10)の1/8が実際の状態の数ということになります。また状態密度は単位体積で定義していますから、(10)をさらに実空間の体積L_x×L_y×L_zで除して (1/8)×{4√(2m_e)^3 /π^2×h~^3} E^(1/2) dE  (11) を得ます。従って状態密度Z(E)は Z(E)={√(2m_e)^3 /2 π^2×h~^3} E^(1/2)  (12a) あるいは Z(E)=4π{√(2m_e)/h}^3 E^(1/2)  (12b) ということになり、いずれにしてもZ(E)はエネルギーEの平方根に比例することが分かります。ここにhはPlanck定数です。グラフにするとおよそ以下のようになります。 ↑Z(E) │      * │   * │ * │* └───────→E 以上は3次元でのお話です。では2次元ではどうなるでしょうか。2次元、すなわち薄膜中での電子伝導は(7)式までは同じですがその先が少し異なります。 薄膜はx方向について極めて薄く、y方向およびz方向には十分に大きく広がっているとしましょう(L_x≪L_y, L_z)。すると波数空間において、許されるk_xの値は極めて限られたものになり、その相互の間隔は許されるk_yやk_zの間隔に比べて非常に大きくなります。格子点はy方向とz方向には稠密ですが、x方向には相当に離散的ということです。 この場合エネルギーEとE+dEの間の状態数の差は、球の体積の差でなく円の面積の差で求めることになります。 まずx方向の基底状態はn_x=1について、 E=(h~^2/2m_e)×{(π/L_x)^2 +(πn_y/L_y)^2 +(πn_z/L_z)^2} {(2m_e E/h~^2)-(π/L_x)^2}=(πn_y/L_y)^2 +(πn_z/L_z)^2  (13) となります。(13)は球の方程式でなく、円の方程式と看做すべき式です。 波数空間の平面k_x=π/L_xにおいて、半径√[(2m_e E/h~^2)-(π/L_x)^2]の円と半径√[{2m_e (E+dE)/h~^2}-(π/L_x)^2]の円の面積差は明らかに π{2m_e/h~^2} dE  (14) です。 またこの平面内において許されるL_y, L_zの面積密度は、π/L_y×π/L_zあたりに2つです。2つになる理由は上記と同じ(スピンの差異で2つの電子が入りうるから)です。 さらにn_y, n_zは正の値に限られることを考えると、許される状態の数は 2×(1/4)×π{2m_e/h~^2}×L_y×L_z÷π^2 dE  (15) ということになります。実空間の単位体積当たりに直せば 2×(1/4)×{2m_e/h~^2}/(L_x π) dE =4π m_e/(L_x h^2)  (16) ということになります。すなわちEの値によらず状態密度は一定という結果になります。 ただし、ある程度Eの値が大きくなってくると今度はn_x=2の場合が入ってきますから、それも含めて状態数を計算する必要が生じてきます。しかしn_x=2であっても(16)の結果は同じであり、n_x=1についての状態密度とn_x=2についての状態密度を単に足し合わせれば全体の状態密度になるということです。 これは言葉で表現するより図を見てもらった方が早いでしょう。以下のような階段状のグラフになります。なお階段の段の高さはどこでも同じです。 ↑Z(E) │           │      ******* │   ***** │ *** │ ** └───────────→E 以上はかなり駆け足で説明したのと計算間違いをしている可能性があるのとから、miake-kiyoshiさんご自身で検算しながら、また教科書などで復習しながら読んでいただければ幸いです。 参考URLのページには精細な波動関数の図や状態密度のグラフがありますからぜひ一読ください。

参考URL:
http://www.qed.eedept.kobe-u.ac.jp/japanese/semicon/semicon_basics.htm
miake-kiyoshi
質問者

お礼

大変ありがとうございました!とても解りやすく解説してあったのでなっとくができました! 今後は自分の力で勉強していきたいとおもいます!

関連するQ&A

  • 箱型(井戸型)ポテンシャル

    このような問題なのですが、教えて下さい。 問1 2次元の無限に深い井戸型ポテンシャルの中の粒子運動を考える。          2L│_       │ │        │ │       │_│__x         L                                     【H:エイチバーの意】   H^2π^2         ny^2            エネルギー固有値は E=――――――(nx^2+――――)                       2mL^2          4            (nx=1,2,3・・・)、(ny=1,2,3、・・・)        (1)基底状態のエネルギー固有地をH、π、m、Lで表せ。    (2)第4励起状態(5番目)のエネルギー固有値をH、π、m、Lで表し、      それを与えるnxとnyの組み合わせを全て求めよ。 問2 1次元の無限に深い井戸型ポテンシャルの中の粒子運動を考える。    エネルギー固有関数はφ(x)=√(2/L)・sin(nπx/L)である。    L=1.0×10^-10m として、第1励起状態にある粒子を、    x=0とx=0.25×10^-10mの間に観測する確率を計算せよ。

  • 無限に深い井戸型ポテンシャルについて

    「ブタジエンの炭素原子の配列を一直線と近似して、両端の炭素原子間の距離L=5.78Åとすると、4個の炭素原子が無限に深い井戸型ポテンシャルを形成していると考えるとき、ブタジエンの基底状態のエネルギーE1を求めよ。4個のΠ電子間の斥力は無視できて、各々が自由電子として振舞うとする。」 以上の様な問題を考えるときにおいて、 エネルギー固有値E= h'^2*Π^2*n^2 /2*m*Lに代入して求めると思うのですが、(h'=h/2Π m=静止した電子の質量) 計算する際にLについてのどのように考えれば良いかがわかりません。私はL/4orLor4Lいずれも計算してみたのですが、どうも合いません^^; どう解釈すれば良いと思われますか?

  • 井戸型ポテンシャルの外側のエネルギー固有値?

    無限に深い井戸型ポテンシャルの問題について質問です。 例えばポテンシャルが -L<=x<=L で0 その他がポテンシャル無限 とした時,井戸の外(x<=-L,L<=X)では波動関数は0となるのは理解できるのですが(ポテンシャル無限では粒子は存在できないから), このときのエネルギー固有値はどうなるんでしょうか? シュレーディンガー方程式を考えると (-h^2/2m∇^2+V)ψ=Eψ (V:ポテンシャル) で,ψ=0だから両片は恒等的に0ですよね? その場合エネルギー固有値って求まらないんでしょうか? (粒子が存在しないんだからエネルギー固有値だって0になるんじゃないかとも思うのですが...) よろしくお願いします。

  • 再び井戸型ポテンシャル…

    すみません、再びなのですが、今度は2次元井戸方ポテンシャル(0<x<L,V=0 x<0,x>L,V=∞)の問題で、固有エネルギーEiがEcより小さなすべての固有状態の数N(E)を求めよという問題なのですが、今度はN(E)が円の面積(Nx,Ny座標での)になっているというイメージがどうもよくわかりません…。なぜそうなるのでしょうか?教えていただけませんか?

  • 三次元球面ポテンシャル

    球対称なポテンシャルを考える。半径 a まではポテンシャルがゼロ、それより大きなところでは無限大であるような球対称なポテンシャルとする。このなかに存在する質量 m の粒子の基底エネルギーと対応する波動関数を求めよ。 こんな問題をしているのですが、基底で球対称なので、一次元の井戸型ポテンシャルと同じ形になり、求める関数F(r)=Aexp(ikr)+Bexp(-ikr) : (k=√2mE/h) だということは予想できるのですが、そのあと何を考えていけばいいのでしょうか。 基底エネルギーと対応する波動関数はどのようにだすのでしょうか。 お願いいたします。

  • 井戸型ポテンシャルについて

    1次元井戸方ポテンシャル(0<x<L,V=0 x<0,x>L,V=∞)の問題で、固有エネルギーEiがEcより小さなすべての固有状態の数N(E)を求めよという問題があるのです。が、調べたところ、これを解くためにはまずこの問題での固有エネルギーを出して、Ei<Ecを満たす最大のEiをEとして、n=N(E)として、エネルギー固有値の式から出せばいいみたいなのですが、これでは全てではなく、Ei=Eとなる時のnの値しか出ないような気がするのですが…。N(E)はEi<Ecを満たすnの総和じゃないのですか?どなたか教えてください。かなり困ってます。

  • 井戸型ポテンシャル(JJサクライ)

    JJサクライ下巻のp397(5.1.15) 摂動論ではないのですが、 さらりと触れられている箇所が納得できずにモヤモヤしています。 非常に弱い一次元の井戸型ポテンシャルを考えます。 V=-V0 (|x| < a) V=0 (|x| > a) λ>0 の引力に対して E = - (2ma^2)/h^2 |λV0|^2 というようなエネルギーの束縛状態がある。 (ここでhはh/2πの意味です) このエネルギーの式はどのように導いたのでしょうか。 単純な井戸型ポテンシャルでもなさそうですし、 トンネル効果と比較してもよく分かりません。 よろしくお願いします。

  • 高さVのポテンシャル障壁をもつ一次元井戸型ポテンシャルの中を一つの電子

    高さVのポテンシャル障壁をもつ一次元井戸型ポテンシャルの中を一つの電子が運動している。 まず障壁の間隔がaだとする。それを瞬間的に2aまで広げた。 間隔を広げる前に基底状態あった電子が、広がった後の系の基底状態に見出だされる確率を求めよ。 この問題の解説をお願いします。厳密な答えは求めなくて結構です。

  • 一次元井戸型ポテンシャル、井戸の外でのシュレディンガー方程式は?

    井戸の深さが無限の一次元井戸型ポテンシャルで、井戸の外において電子が満たすべきシュレディンガー方程式を求める問題があるのですが、井戸の外では波動関数φ(x)=0なのでシュレディンガー方程式は0になると考えたのですが、合っているでしょうか?

  • 電子物理学について

    電子物理学について まだ学習し始めたばかりで、基本的な事もわからないので、教えてください。 1次元系の無限に高い井戸型ポテンシャルについて、基底状態のエネルギーが0にならない理由を不確定性原理の視点から述べよ、という問題が解けません。 参考になるページ等も教えて頂けると嬉しいです。 よろしくお願いします。