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パウリの排他律は多電子系において成り立つべきなのか?

件名の通りですが、パウリの排他律が「多電子系」において成り立つべきなのか疑問に思ったので、質問させていただきました。 よく見るパウリノ排他律の定義: 「2つの電子が同時に同じ量子状態(エネルギー状態)を占めることができない」 まず教科書に出てくるような「中心対称な1電子系における主量子数による電子状態の定義」はわかっているつもりです。この「電子状態の定義」のもとでは、上記の「パウリの排他律の定義」は特に疑問は無く、フェルミオンの反対称性から導出されることも理解できます。しかし、一般にこのような「電子状態の定義」は(私が知る限り)無理です。 (質問1)一般の多電子系において、電子状態とはどう定義されるべきものなのか? 話を簡単にするため、非相対論的ハミルトニアンH(つまりは量子力学の最初にならうようなシュレディンガー方程式)を考えます。このとき、パウリの排他律は、この「H」と「多体波動関数の反対称性」で「パウリの排他律」を説明できないか考えてみました。(もっとも近似的なハミルトニアンを用いているため、パウリの排他律が満足される必然性がない可能性がある、とは思います。) 結論から言いますと、私には説明できませんでした。 (質問2)「H」と「多体波動関数の反対称性」で「パウリの排他律」を説明できるのか?できないのであるとするならば、非相対論の範囲ではパウリの排他律を満足しない可能性がある? (質問3)量子力学にとらわれず、相対論、素粒子論も含めて、なにかパウリの排他律を説明する手段をご存じないでしょうか?多電子系の場合において。 よろしくお願いします。

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回答No.2

白色矮星はパウリの排他律によって成り立っています。白色矮星の重力はパウリ排他律による縮退圧で支えられていることをR.H.Fowlerが示して以来、常識になっています。嘘だと思うなら白色矮星の解説のどれでも(ただし、もちろん自称専門家の書いたもの以外のもの)を読んでみてください。 http://onogakuenblog.typepad.jp/kitamoto/2008/12/index.html 白色矮星は「パウリ排他律が絶対でない例」ではなく「パウリ排他律が重要であることを示す良い例」です。 通常は波動関数の反対称性からパウリ排他律が導かれると考えるのではなく、パウリ排他律という原理から波動関数の反対称性が演繹されると考えると思います(歴史的には電子の波動関数を反対称化するとうまく行くことから帰納されたものでしょうが)。 パウリ排他律が成立しないような例がないのかといえば、「ない」といってよいと思います。かってはクォークはパウリ排他律に従わずパラ統計に従うのではないかと考えられていた時代もありましたが、南部陽一郎がカラー自由度を導入して以来、クォークもパウリ排他律に従うことが明らかになっています。現在、素粒子、原子核、物性物理学においてパウリ排他律は基本的で常に成立するものとされていると思います。

atushi256
質問者

お礼

解答ありがとうございます。 URLのリンクを拝見しましたところ、なんとなくな「なぜパウリの排他律が重要なのか」イメージわきましたが、具体的な定義が残念ながらありませんでした。 おそらく、素粒子論(標準理論?)のレベルになってしまうので、説明が見つからないのでしょうか。 >パウリ排他律は基本的で常に成立するものとされていると思います。 私もそう思っていましたが、思えば具体的な数学的定義を見たことが無く、今回の質問させていただく結果となりました。 と、ここまで書いて思い立ったのですが、1粒子密度行列を考えたとき RDM(i,j)=<Ψ|C_i^† C_j|Ψ> その固有値(=占有数)は0以上、1以下です。思えば、これがパウリの排他律に相当しているのではないでしょうか?同じ状態(1粒子密度行列の固有状態)を2つ以上の粒子が占有する(=占有数が1より大きい)ことはない。このとき占有数がフェルミ・ディラック分布を満たすのかどうかは、わかりませんが(固有状態のもつエネルギーをどう定義すべきかわからないため)。

atushi256
質問者

補足

結局のところ、素粒子の方にも聞きましたところ、以下の結論に達しました。 パウリの排他律自体は、数学的にかっちりしたものではなく、一電子軌道で波動関数が表されているような近似の範囲内で定義されている。つまり、やはり、厳密に成り立たなければならないようなものではない。そもそも定義がはっきりしないため、成り立つも何も無い。 歴史的には重要で、意味深く、それゆえノーベル賞もとりましたが、現代となっては説明の便宜上イメージしやすいがために使われているに過ぎない。そこから抽象化、一般化した「フェルミ統計(≒交換関係)」が真に満たされるべきもの。フェルミ統計が正しいかどうかは、理論と観測結果を照らし合わせて判断されるべきものであって、今のところ正しいとされている。 「非相対論のハミルトニアンH」の解が「フェルミ統計」を満足するかどうかは自明ではない。しかし、Hは理論的には良い近似であるはずであり、実際相対論が重要ではない範囲で実験との定量的かつ定性的一致を見る。良い近似である以上、フェルミ統計を満足している可能性が高い。場の演算子を用いた場合は、そもそもフェルミ統計に立脚しているので、波動関数はフェルミ統計に従うはず。 以上が今のところの結論です。 私としましては、今のところ十分この結論で満足かなと思っています。

その他の回答 (2)

回答No.3

白色矮星について私が挙げたURLは手軽に見るには良いですが、もっとちゃんとした本を読まれることをお勧めします。  S.L.Shapiro and S.A.Teukolsky,"Black Holes, White Dwarfs and Neutron Stars" (Jhon Wiley and Sons) 白色矮星は高密度・低温の星で電子がほぼFermi準位まで占有されているような星です。パウリ排他律によって温度が0でも圧力(縮退圧)が生じるため強い圧力を支えられるのです。もちろんこんな素人でも知っているようなことは「専門家」の権威ある回答に完璧に記述されています。しかし「専門家」のご高説はあまりにも程度が高く難解、Sophisticatedで凡人には理解不能です。高踏的、高度の素養を要するため素人が読むと逆の意味にさえ取られかねません。つまり「白色矮星ではパウリの他排律が破れて全ての電子が1s軌道に落ち込みます。」という文を素人でも分かるように書き直すと「パウリ排他律のため最低エネルギー準位に全ての電子が入ることはできず縮退圧が生じます」となるのです。なんという深い含蓄でしょう!さすがは「専門家」ですね。パウリ排他律を実際の問題に適用するときは「フェルミオンの波動関数は反対称化すべし」という形で使われてきました。これはあらゆる領域で有効性が確認されてきました。場の演算子の反交換関係を厳密に定式化しても波動関数の反交換関係を導けないのではしょうがないのではないでしょうか。

atushi256
質問者

お礼

補足 ありがとうございました。 >パウリ排他律を実際の問題に適用するときは「フェルミオンの波動関数は反対称化すべし」という形で使われてきました。 結局のところ、第一量子化(と言うのかどうか知りませんが)の範囲においては、パウリの排他律≒フェルミ統計=>反対称化でよいようで、安心しています。なんら、今まで自分がしてきたことに矛盾しなかったからです。 「非相対論のHはあくまで近似であり、フェルミ統計を満たす根拠があるわけではない。」と書きましたが、よくよく考えたら、ハミルトニアンの粒子番号に対する対称性から、固有波動関数は粒子の入れ替えに対して反対称(または対称)にとることができますね。 しかるに、フェルミ統計=>反対称化とするなら、全く問題は無かったということになりますね。残る問題は 反対称化=>フェルミ統計 が言えるのかどうかどうかですが、それはゆっくり考えたいと思います。 ありがとうございました。

noname#160321
noname#160321
回答No.1

パウリの他排律はかなり強力で白色矮星が出来る重力まで有効です。 白色矮星ではパウリの他排律が破れて全ての電子が1s軌道に落ち込みます。 これ以上重力が大きくなると幾分の巨大な飛躍がありますが、電子が原子核に落ち込んで中性子星になっちゃいます。

atushi256
質問者

お礼

解答ありがとうございます。 >白色矮星ではパウリの他排律が破れて全ての電子が1s軌道に落ち込みます。 としますと、ハミルトニアンの中の外部ポテンシャル項が非常におおきくなると、パウリの排他律で避けあうよりも、1sになだれ込んだほうがエネルギー的に安定な場合があるということでしょうか。 パウリの排他律が絶対ではない例 と解釈しました。 ただ、良くわからないのですが、1sという概念は本当は多電子系では正確に定義できないはずです。いわゆる1s軌道にプロジェクションをとったら、その期待値が大きかったと言うことになるのでしょうか?仮に、そうであるとすると、 多体波動関数Ψ=φ_1s(r_1) * φ_1s(r_2) * φ_1s(r_3) * ・・・ *φ_1s(r_n) ということにはなりませんでしょうか?2電子系の場合、 多体波動関数Ψ=φ_1s(r_1) * φ_1s(r_2) はありえます。2つの電子のスピンが逆であれば、多体波動関数は反対称であり続けるからです。しかし3電子系の場合、 多体波動関数Ψ=φ_1s(r_1) * φ_1s(r_2) * φ_1s(r_3) ではまずいはずです。なぜならば、3個のでんしのうち、どれか2つは必ず同じスピンを持っているはずなので、多体波動関数は反対称になりません。反対称にすると、Ψ=0となってしまいます。結論として、おそらく、1s軌道に限りなく近い別の軌道を電子は占有しているのだろうと思います。それであれば、反対称化してもΨ=0にはなりませんので。 つまりパウリの排他律を考えるときは、いわゆる1sなどの軌道にプロジェクションをとってみて、判断するということなのでしょうか。1sになだれ込んでいるように見えたら、排他律は破れていると判断するように。 とはいえ、外場項が非常に大きい極限を考えているのに、相対論無視した議論をしていいのかどうか、わかりませんが・・・。

atushi256
質問者

補足

いろいろ考えました結果「パウリの排他律は厳密に成り立つようなものではない」と結論づけました。 理由は、 (1)多電子系の場合に定義が曖昧であり、どう定義していいかも不明 (2)白色矮星などのように、外場項が非常に大きいとき、破綻するとされている事 です。 通常の原子や分子の場合、おそらくたまたま電子間相互作用項があるため、パウリの排他律が成り立つような状態が基底状態に近かったということだろうと結論しました。 どうもありがとうございました。

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