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鶏肉の安全性

鶏から人に感染する新型インフルエンザが流行すると言われている昨今ですが、鶏肉を食すことは問題ないのでしょうか? 鶏の唐揚げが好きで、つい買ってしまうのですが、食べたあとに少し心配になります。 新型インフルエンザとの関連で鶏肉は控えた方が良いか否か、ご意見をお願いします。

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noname#160718
noname#160718
回答No.1

 獣医師です。鳥インフルエンザについては多少なりとも専門知識を有しています。  結論から書きますと、まったく問題ないです。  詳しい説明の前にちょっと整理します。  なお、本回答の"インフルエンザウイルス"は全てA型インフルエンザウイルスを指します。  インフルエンザウイルスは、元々はカモ等の水禽類が自然宿主で、その他の鳥類にも容易に感染するウイルスです(鳥インフルエンザウイルス)。  この鳥インフルエンザウイルスは、ヒトにはほとんど感染せず、仮に万が一感染してもそのヒトから別のヒトには感染しません。ですが、ヒトに容易に感染するような変異を遂げたインフルエンザウイルスは、ヒトの世界に定着してヒト→ヒト感染で広がっていきます。  このような「新たにヒトの世界に入ってきたインフルエンザ」を「新型インフルエンザ」と呼ぶわけです。  また、新型インフルエンザウイルスがヒトの世界に出現する時は、全てのヒトはこのウイルスに対する免疫を持ちませんから、爆発的な大流行を起こし病原性も強いので、多くの犠牲者が出ます。この「世界規模の大流行」をパンデミックと呼ぶわけです。  前世紀、人類は3回のインフルエンザパンデミック(新型インフルエンザによる世界的大流行)を経験しています。  1918年のスペイン風邪、1957年のアジア風邪、1968年の香港風邪がそれです。これらのウイルスはその後、人類の間に定着して「普通のインフルエンザ」になっていきます。現在、ヒトの間で流行しているのはH1N1とH3N2の2つの亜型です。  さて、話を一旦鳥に戻します。  インフルエンザウイルスは自然宿主である水禽類に対してはほとんど病原性がなく増殖もたいしてしないのですが、鶏など一部の鳥種に感染すると極めて高い病原性(鶏に対して)を発揮するような変異を遂げることがあります。  この、鶏に対して極度に高い病原性を獲得したものを、「高病原性鳥インフルエンザ」と呼びます。  インフルエンザウイルスはH1~H16の16タイプのHA亜型があるのですが、そのうち「高病原性変異」をするのはH5とH7に限られています。  それで日本では鶏等の家禽からH5かH7の亜型が分離されると、全て「高病原性鳥インフルエンザ」として扱うことになっています。なので数年前の茨城での事例のような「低病原性の(あるいは弱毒タイプの)高病原性鳥インフルエンザが発生した」というような、一見おかしな表現がされることがあるわけです。  さて、この高病原性鳥インフルエンザ(以下HPAIと略します)は、鶏に対しては死亡率100%に近い激烈な病原性を発揮しますが、ヒトに対しては必ずしも感染するとは限りません。  4年前に山口、大分、京都で発生したHPAIのウイルスは、鶏に感染実験をすると24時間以内に100%死亡という極悪な病原性を持っていましたが、ヒトには非常に感染しにくいウイルスでした。京都の事例で作業員数名に感染していた可能性があることが、後の血清学的調査で判明しましたが、いずれも症状はありませんでした。つまりヒトに対しては病原性がなかった、ということです。  ここから鳥の話とヒトの話が合流します。  現在、アジアで鶏の間に蔓延しているHPAIのウイルスは、4年前の山口、大分、京都や去年の宮崎、岡山で発生したのと同じH5N1という亜型なのですが、アジアのウイルスは鳥→ヒト感染が既に300例ほど確認されています。  これはアジアのウイルスが「ヒトに感染しやすいタイプ」のウイルスであることと、鶏の飼養環境などの社会的条件が日本とアジア諸国では異なること等が要因として考えられます。  また、アジアのウイルスはヒトに感染した時の致死率が60%ほどですから、ヒトに対しても凶悪な病原性を持っている、という点でやはり過去に日本で発生した事例のウイルスとは異なります。  ここからいよいよ回答の核心なのですが、「鶏肉を食べて感染しないかどうか心配する」のは、「高病原性鳥インフルエンザウイルス」について、なのです。  新型インフルエンザというのは「新型」になった時点で既に鳥からヒトではなく、ヒトからヒトに容易に感染するウイルスになってしまっています。ですから新型インフルエンザと鶏肉は根本的に「無関係」なのです。  で、鳥インフルエンザが鶏肉から感染するか、ですが、現在までに鶏肉や卵を食べて鳥インフルエンザに感染した、という事例は報告されていません。(というのが農水省や厚労省の公式見解)  これまでに鳥インフルエンザに感染した人は、鳥を自分でさばいたり発生地の防疫活動に従事したりという、「かなり濃厚にウイルスに暴露された場合」なので、鶏肉や卵を食べたくらいでは鳥→ヒト感染は起きない、ということです。  まして唐揚げなので、仮に誰かが悪意を持って鶏肉にウイルスを仕込んでいたとしても(いわゆるバイオテロ)、調理の熱でウイルスは死滅してしまっています。  さらに言うなら、現在日本では鳥インフルエンザは発生していません。高病原性、弱毒も全て含めて、現在の日本の鶏にはインフルエンザウイルスは存在していない、とかなりの確信を持って言うことができます。  輸入鶏はまた別ですが、これも発生国からは輸入停止措置がとられますから、この心配もまずありません。(発生国に対する輸入停止措置を講ずるのは、鶏肉からヒトへの感染を心配しての措置ではなく、国内にウイルスを入れることによって鶏に感染拡大することを恐れての措置です)  今年の春に白鳥からHPAIウイルスが分離されたことは記憶に新しいかと思いますが、これも鶏には感染拡大していないことが判っています。  というわけで、私自身、鶏肉も好きですし生卵も好んで食べています。  猟師さんからカモ肉をもらったら喜んで食べますし。

noname#91286
質問者

お礼

お答え頂き、ありがとうございます。

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