in the summerは総称表現か
以前、Aのような文において、なぜsummerにtheがつくのか複数のネイティブに尋ねたことがあります。それに対して満足のゆく回答がなかなか得られませんでした。この問題はBにおいてなぜthe morningにtheがつくかという問題と同じ内容のものです。
A: We go to the sea for vacation in the summer.
B: My mother clean the living room and the bathroom in the morning.
一人だけ、Bに関して、morningはafternoonやeveningと対立関係を持つからと答えた人がいました。もちろんそれが正解なのですが、当時の私はそれだけが正しい考え方なのか自信がなかったのでネイティブに確認しようとしたわけです。彼らのうちの多くが、the summerはsummersを一般化したものだから、the morningはmorningsを一般化したものだから、と答えました。でもこれは答えになっていません。一般化されて表記されたものがthe summerなりthe morningであるわけで、では<一般化されて表記された時なぜtheがつくのか>については答えていないわけですから。
私としては、the summerがsummersを、the morningがmorningsを一般化したものだという見解自体に疑念を抱いていました。英語圏を中心に世界中で読まれている文法参考書にも総称表現としてのthe roseはrosesを一般化したものだと記されています。私としてはこの件なら納得できました。動植物の場合、そうした一般化は普通に行われていることですから。でもsummers→the summerという一般化説には違和感があったので、これを生徒に教えることはひかえてきました。
というのは、一般に、可算名詞にtheをつけた総称表現はtheをつけない複数名詞によっても表現されるはずだからです。ところがin summersとかin morningsといった表現を見たことがありませんでした。ネイティブに聞くとそういう言い方はないとのことでした。間違いなのかと聞くと、間違いではないという人と、間違いかどうかわからないという人とに分かれました。
意味的にいうと、summersと違ってthe summerは個々のsummerの差異を捨象したものなので典型的な<夏>を表しているはずです。Aにおいて、<夏>が典型的なものである必要はないので、おそらくthe summerがsummersの一般化だという説は誤りだろうと考えていました。
では、the summerが総称表現として使われる場面があるかということですが、もちろんあり得ます。個々のsummerは他のsummerとの間に差異がありますから。それが表現されやすいのは、比較がなされる文脈においてだと思います。
たとえば、I like the summer better than the winter. は容認されます。the summerをsummersにかえても容認されます。一般に何かと何かを比較する時、典型的な性質を比較する方がやりやすいと言えます。よって、the summerはOKということになります。おそらく、summersを使うよりthe summerを使った方が、特に本質的な部分での比較がやりやすいということだろうと思います。おおざっぱに比べるのであればsummersの方がやりやすいはずです。
the summerの代わりに無冠詞のsummerにしても容認されます。無冠詞の場合は、不可算名詞の総称用法と考えればいいはずです。(the summerとsummersは可算名詞扱いです)
この問題をもう少し詰めてみました。なぜin summersやin eveningsが総称表現として使えないかという問題です。inの後に複数名詞を使って一般的なことを述べる文はいくらでもあります。例えば、Computers are being used in offices and schools these days. においてoffices もschoolsも共時的な存在物です。
ところが、in と共に使われるsummersやmorningsは継時的なものであって、in summersやin eveningsは時間の経過を表現することになります。Aの文は時間の経過を表すものではなく、夏という期間や時期を表すものなのでやはりin summersは使えないことになります。
これで問題は解決したと思うのですが、もう少しつっこんでみます。時間の経過を表す場合の例文を書いておきます。
B: We will arrive home in a few minutes.
ネイティブはsummersやin eveningsはinの後には使えないと言います。なぜなのかは教えてくれませんでした。では、summersやeveningがAでは使えないということはそれでいいとして、summersやeveningsが常にinの後では常に使えないのかという問題を考察してみました。
時間の経過というものはある一定の時間が経過したことを表すものであって、不定な時間の経過などはあり得ません。ということは、Bにおいてin minutesは使えないことになります。よってin summersやin eveningsが時間の経過を表すものとしては使われないはずです。
では例えば、We will come back home in a few minutes. において、in a few eveningsやin a few summerが使えるかということですが、普通の感覚であれば代わりにin a few daysやin a few yearsを使うところだと思います。でも、話者がこの発言をある日のeveningに行ったとか、ある年のsummerに行ったのであれば、表現としては可能だと思います。
ついでの話をしましたが、結局、Aにおけるthe summerがsummersの一般化だという主張は誤りだと思います。では、なぜtheがつくかということですが、やはりsummerが他の季節と対立関係をなすからという言い方しかないのだと思います。
長くなりましたが、この考えでいいのでしょうか。これまでの議論の展開においておかしい点や曖昧な点があればご指摘をお願いします。
もう一つあります。A:We go to the sea for vacation in the summer. において、イギリス人はin summerを使います。この場合のsummerは概念です。Aの文は一般的・習慣的な内容のものですから、問題なく総称表現として使えています。
でも、in the summerとの違いがあるはずです。in the summerはspring, summer, autumn, winterを生活の便宜のために作られた枠組みを使った表現だと思われます。言語使用者にとっては客体的にとらえられるもので、各要素は1年を4分割したものととらえられているはずです。つまり、in the summerにおけるsummerは暦の上での夏の期間を表すはずです。
一方、in summerにおけるsummerは概念ですから、「暑い頃に」の意味しかないはずです。このように意味の違いがあるはずですが、それでもアメリカ人もイギリス人も同じものだと言いはります。思うに、夏の期間と言ってもそれは暑い頃のことだし、暑い頃は夏の期間でもあるわけですから、実質的に同じものじゃないかと考えればいいのかなと思っているところです。この考えでいいのでしょうか。ご意見をお伺いしたいと思います。