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完璧な言語翻訳システムは作成可能か?

stomachmanの回答

  • stomachman
  • ベストアンサー率57% (1014/1775)
回答No.5

「コンピュータに文章の意味を理解させることができるか」という設問に対して幾つか観点を提出します。 ●まず、人が文章を理解しているかどうか、これがそもそも大変怪しいんです。「理解」って何でしょう?現代国語のテストを受けて満点が取れないような人を見ても、その人が文章を理解できないとは思わないのはなぜでしょうか。 文章を読んだ人に質問すると、その文章に関して次々と色々な事を言ってくれるでしょうが、それらの事を文章を読んだ瞬間に心の中に形成したとは限りません。むしろ、対話によって初めて理解が進んだという事の方がありそうです。知能における機能主義の観点では、その文章に関してヒトと同じように対話ができる(チューリングテストにパスする)機械は、その文章が理解できている、ということになるでしょう。 ●日本語は文法がありません。正確に言うと「規範文法」つまり「正しい日本語」かどうかを判断するしっかりした基準がないのです。「小原は会社で早朝に会議がはじまる」は正しいでしょうか?高度なものでは「完全に焼け落ちてしまった建物の上をヘリコプターが飛んでいた」という例文はどうでしょうか。(既に存在しないものの上ってどこでしょう?)いわゆる文法学者の説は、あくまで学者ご当人の感覚で適否を決めていて、中には首を傾げるような例文もある。ドメニコ・ガラナ(「これは日本語か」河出書房新社)は数千人の日本人に沢山の例文の適否を判定して貰うという膨大な研究の結果、分からん、と言っています。(機械でも人でも)文をかなりいい加減に理解しておいて、後に出てくる文を見たり、文に関する質問を受けてから、もとの文の意味を解釈しなおす、という作業が必要になりますが、普通そこまでは、やりませんね。人は本当に意味が分かっているんでしょうか? ●感情をシミュレートできなくては、機械が文を理解できたということにはならないでしょう。単に機械自身が感情を持つだけでは全然ダメで、発話者あるいは著者の暗示している感情を慮る必要がある。これはヒトでも旨く出来ない個体が多い。また、感情が「怒り度80%」というだけではなく、様々な概念への連想を引き起こすことこそが重要です。このような深い意味での感情の理解ができなくては駄目ですね。感情が文の形態に反映する仕方は人様々ですが、わざと不自然な表現を使ったり、急に文体を変えたりしてそれを伝えようとすることは共通です。ひとたび「文の表面的内容よりも、背後にある感情こそが伝えたいこと」なのだと推察できれば、目標は「何を察して欲しいかを推定すること。なぜそれを明示的に言わないか、その理由を推定すること。」に切り替えねばなりません。大変ではありますが、機械で実現できないと考える理由はありません。 ●Qualiaも問題ですね。クオリアは「感覚質」と訳されたりしますが、たとえば赤い物を見たときの「赤い」という感覚そのものです。比喩・暗喩が有効であるためには、quoliaが重要です。「サラダ記念日」の「サラダ」のみずみずしい感覚が適切な連想を引き起こす(映画ならモンタージュというやつですね)。「たらこ記念日」だったら雰囲気がだいぶ違いますね。機械にquoliaが備わっていないとすると、代わりに「サラダ」と連想されるべき概念のリスト、のような陽的情報を持っている必要があります。しかも、この情報は経験によって変化していくのでなくてはならない。例えば、小説の中で繰り返し使われる小道具や情景は、新しい連想を形成することを狙っている場合がある。 ●さらに語の音や文字そのものの持つquoliaも、作文においてどんな単語を選ぶか、という判断と深く関わっています。たとえば「めらめら」のように2音節の音を2度繰り返す擬態語において、「めらめら」mera-mera=*e*a-*e*a、のように母音に注目して分類してみると、それぞれの型ごとに共通する「感覚」のようなものがあるのが分かります。 (a,a)型「ばらばら」「ざらざら」「だらだら」「がばがば」「からから」「がたがた」 (i,i)型「ぴりぴり」「ぎりぎり」「ひりひり」「ちりちり」 (u,u)型「ぐるぐる」「つるつる」「するする」「ぐぶぐぶ」 (o,o)型「ぽろぽろ」「どろどろ」「そろそろ」「ぽこぽこ」「もぞもぞ」 (e,e)型「でれでれ」「てけてけ」(この型は数が少ない) (u,a)型「ぶらぶら」「ずかずか」「すらすら」 : また使われる子音に注目しても何か共通の雰囲気がある。(だからこそ、聞いたことのない語「ぺもぺもと歩く」を言われたとき多少とも雰囲気が伝わる訳です。)商品の名前をどうするか、など、音のqualiaの感覚なしには判断できないでしょう。「喫茶すぴすぴ」と「喫茶ちゃらちゃら」、どっちに入りましょうか? 機械にこの感覚を与えるには、(もちろん陽に記述されたルールという方法もありますが、できれば)沢山の例文から、音と雰囲気との連想を自発的に形成させる、というのが望ましい。そのためには、雰囲気が分からなくてはいけない。普通に分類されるような感情だけでは「雰囲気」は記述できないので、雰囲気の分類そのものを形成させなくてはならない。外界との接触なしにはこれは不可能です。かくて、機械は極めて優秀かつ前衛的な言語学者・心理学者にならざるを得ません。

mori0309
質問者

お礼

stomachmanさん、ありがとうございます。とても多角的な分析とアドバイス 本当に、私にとって、思考訓練になります。 (この部屋は閉じさせていただくことにしました。メモリオーバーフローなので)

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