• ベストアンサー

権利(人格)なき社団の責任範囲について

 よく何かをしようというときに、いろいろな団体や人が集まって「○○実行委員会」というのを作ると思うのですが、この団体は、法的に見れば、「権利なき社団」ということになり、法人格もない任意の団体ということになります。  この実行委員会に対し、たとえば損害賠償の訴訟が起こされ、所有財産以上の額の支払い命令判決(たとえば所有財産が120万円なのに300万円の支払命令)が出た場合、法人のような「破産宣告」に類する行為を行い、不足分を免責にするということは可能でしょうか。  また、可能でない場合、実行委員会の構成員の支払い義務はどのようになるのでしょうか。  どなたか法律に詳しい方、ぜひよろしくお願いいたします。

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
noname#4720
noname#4720
回答No.2

この種の問題は、学説上、様々に説が分かれております。ここでは判例の考え方を中心にご説明いたします。 人の集まりが、その集まっている個人個人を離れ、団体として独自に存在するものとして認識できるような実態が備わったものを「社団」と言います。 一方、ある目的をもって集まってはいるものの、あくまである目的のために個人個人の契約によって集まったものにすぎず、各個人を離れ、団体として独自に存在するとは言えないような団体を「組合」と言います。 上記の「社団」の中で、公益目的で営利目的を有しておらず、主務官庁の許可(民法34条)を得たものが『公益法人』であり、営利目的を有し(商法52条2項)、一定の手続きを済ませたものが『営利法人(会社)』です。 「社団」としての性質は有しているものの「法人」としての要件を備えていないものを「権利能力なき社団」と言います。 しかし、「権利能力なき社団」と「組合」との区分けは非常に難しく、個々の事例に合わせて判断すべきであると考えられております。 但し、そのどちらであるにせよ、その代表者または管理人の定めのあるものは、その名において訴え、または訴えられることができるとされ(民事訴訟法29条。最判昭37年12月18日)、訴訟上の当事者能力が認められております。 このうち、まず「権利能力なき社団」からご説明いたします。 「権利能力なき社団」というためには、「団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更に関わらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理など団体としての主要な点が確定していることを要する。(最判昭39年10月15日)」とされております。 「○○実行委員会」が、上記要件を満たし、「権利能力なき社団」であると判断される場合、その社団の資産は「構成員に総有的に帰属するもの(最判昭32年11月14日)」とされ、「権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、一個の義務として総有的に帰属するものであり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的責任を負わない(最判昭48年10月9日)」と解されております。 従って、「権利能力なき社団」の債権者は、その社団の資産に対してのみ強制執行等の手続きをとることができるだけです。 この「権利能力なき社団」が、「破産宣告(破産法126条1項)」を受け、社団財産が「破産財団(同法6条)」となった場合には、債権者は、その破産財団から配当を受け得るのみとなります(破産法15、16条など)。 ですから、ご質問の設例の場合、債権者は、社団資産の120万円に対してのみ、配当を受けることができることになります。 一方、「○○実行委員会」が、民法上の組合の性質を有するものである場合には、事情が全く異なります。 この場合、各組合員は、利益が出た場合のみならず、損害が発生した場合にも、その出資の価額に応じて各組合員は配分して責任を負うものとされており(民法674条)、債権者は組合財産のみならず、各組合員の個人財産に対してもその権利を行使することができ(民法675条)、しかも、組合財産に対して先に権利行使をしなければならない必要はなく、先に各組合員に対して権利行使をすることもできるものと解されております。 ですから、ご質問の設例の場合、債権者は、組合財産120万円に対して先に権利行使をし、残債権180万円につき、各組合員に対してその出資価額に応じた割合で請求しても良いですし、最初から、300万円全額に対して各組合員に対して出資価額に応じた割合で請求しても良いことになります。

huchio
質問者

お礼

 大変丁寧なご回答ありがとうございました。わかりやすく説明していただき、よく理解することができました。また、具体的な判例も入れていただき大変参考になりました。  今回私が質問したケースでは、zatsunennさんのご説明から判断すると、「組合」ではなく「権利能力なき社団」ということになりそうです。  zatsunennさんだけでなく他にご回答をいただいたお二人も含め、法に詳しい方が会員にいらっしゃるということは本当に心強い限りです。  今回は本当にありがとうございました。

その他の回答 (2)

  • tk-kubota
  • ベストアンサー率46% (2277/4892)
回答No.3

理論的にはzatsunennさんが詳細に解説しておられるので私は実務上でお話しします。 まず、その損害賠償請求の訴状を提出する場合、当事者適格証明書はどのようなものでしょうか? その証明書がなかったり適当でなければ口頭弁論以前に「却下」となる可能性が強いと思います。仮に、そうでなくてもその委員会の一人が原告である場合など勝訴が非常にむつかしいと考えられます。 次に、仮に、勝訴したとしても実際に強制執行はどのようにするのでしよう。銀行預金口座名も、その債務名義に記載された名称なら結構ですが、最近では口座開設時に資格証明書など必要ですから、これまた、実際の強制執行が困難と思われます。そのようなわけで質問のように次々と進行して行かないと思います。 私なら、被告を「○○実行委員会」としないで、その構成員全員を被告とし、共同して支払え、と云うような訴状でします。そうした場合誰に請求してもかまいませんから債権回収に現実的と思われます。

huchio
質問者

お礼

 早速のご回答ありがとうございます。大変参考になりました。ご回答中「私なら」以降の記述は実務面で特に参考になりました。  質問からさほど時間もたっていないというのにご親切な回答をいただき、tk-kubotaさんには心から感謝いたします。  本当にありがとうございました。 

  • shoyosi
  • ベストアンサー率46% (1678/3631)
回答No.1

 法人の破産の場合は一般的には最終配当が行われ、裁判所の「破産終結決定」が下されますと、裁判所が法人登記簿に「破産終結」という登記をします。これにより「法人」は最終的に消滅し、この世の中から消えてなくなったことになります。権利義務の帰属主体である「法人」そのものが消えてしまうのですから、その債務も存在しないことになります。他方、「自然人」の場合には破産が終わっても死亡してしまうわけではありません。その存在は残りますから、「免責」によって残債務を消してやることになります。「権利能力なき社団」につきましても、破産宣告されますと、その社団については総有財産だけがその責任産となります。それで、確保されなかった債務を、構成員各自が直接に取引の相手方に責任を負うものであるかは、学説上は通説は認めませんが、営利団体では認め、非営利団体では認めない有力説もあります。判例は、通説のとおり、認めていません。設問では、破産宣告を受ければ、構成員の支払い義務はないことになります。

参考URL:
http://roppou.aichi-u.ac.jp/scripts/cgi-bin/hanrei/hanrei.exe?829
huchio
質問者

お礼

 質問を出してからほとんど時間もたたないうちに回答をいただき感激しています。実は今回の質問は、私がこの「おしえてgoo」に登録して初めての質問だったのです。パソコンをあまり知らない私が、この質問をするために四苦八苦しながら登録を終え、ニックネームも何も知らないという意味で「不知男」としました。質問を打ち込んでいる最中は、「こんな質問には誰も答えてくれないかもしれないなあ」と半信半疑でした。ですから、今回のご回答は涙が出るほどうれしいです。今後私も答えられる質問にはできるだけ答えていこうと思いました。(情報公開と個人情報の保護の分野については少しだけ知識があります。)  shoyosiさん、今回は本当にありがとうございました。

関連するQ&A

  • 人格のない社団について

     お世話になります。  法人格のない社団(権利能力なき社団)についてご教授ください。  法人格のない社団で,規約において,代表者(委員長)が欠けたとき,に副委員長が代行すると定められているのですが,委員長の定員が5名となっています。しかも,規約では,副委員長が代行する場合,誰が代行になるかの規定(あらかじめ順位が決めてあるなどの代表代行の決め方)がありません。  そのため,現在,委員長が欠けて,副委員長5名がいる状態になっています。  そこで質問なのですが, (1)この場合,代表者が5名になるのか,それとも,いない状態になるのでしょうか? (2)代表者がすることとなっている行為(今回は,補助金の申請)については,代表者が個人として行うことになると思うのですが,5名の代行がいる場合は,5名の連名で行えるのでしょうか? あるいは,代表が選出されるまではできないのでしょうか?  私の理解では,  人格のない社団が補助金を申請する場合は,人格のない社団そのものが申請はできないので,代表者が申請者になる。5名の連名で申請した場合,5名それぞれの申請額が不詳であることから,そうした申請はできない。 というものですが,どうでしょうか?  

  • 権利能力なき社団の財産について

    権利能力なき社団の財産について 皆様はじめまして。 僕は現在ある団体の長を務めております。 その団体なのですが、法人としての登記もなされていないので 民法でいうところのいわゆる「権利能力なき社団」だと思います。 その団体を運営するために構成員全員から1年の会費として 1人4000円ずつ徴収したのですが、思ったより団体としての 支出が少なかったので、余った分を全員に少しだけ キャッシュバックしたいと考えました。 しかし、権利能力なき社団の財産は構成員に総有的に帰属すると伺ったので、 持ち分という概念を設けてキャッシュバックすることはできないのではないかと思いました。 あくまでも団体の財産として運用するしかないのでしょうか。 ここで質問なのですが、権利能力なき社団でも合意があれば財産を 構成員にキャッシュバックさせることはできるのでしょうか? もし、できないとしたら還元する方法はその余ったお金で みんなで飲み会に行くなどでしょうか? あと、そのお金で構成員全員ではなく数名と飲み会に行った場合は 刑法でいうところの背任罪ないし横領罪が成立するのでしょうか? よろしくお願いします。

  • 社団法人の作り方

    私の関与している、ある障害者団体が、今後の活動のために法人格をとらなければならなくなりました。障害者団体なので、一般には社会福祉法人が適当かと思うのですが、社団法人も検討してみたく思っています。 社会福祉法人について色々資料もあるのですが、社団法人については全然わかりません。社団は何の法律で規定されているのでしょうか? それと監督官庁はどこになるのでしょうか? とにかく手探り状態ですので、関係する法律名などを教えて下されば、少し自分で調べてみたいのです。 よろしくお願いします。

  • 権利能力なき社団について

    大学で「権利能力なき社団について論ぜよ」というテーマで レポート(800字から1000字程度)を書けという課題が出ました。 この授業は法律を専攻していない 他の科の生徒向けの授業で、 パワーポイントを使っており、 教科書は使用していません。 先生は授業でこれについて少し触れただけで それ以上言及しなかったので 大変恥ずかしい話ではありますが まさかこれが課題になるとは思わず、 まったく手つかずでいままで過ごしてきました。 権利能力なき社団について ネットで調べたところ 「社団(団体)として実質をそなえていながら、法令上の要件を満たさないために法人 としての登記ができないか、これを行っていないために法人格を有しない社団」 とありました。 (ウィキペディア参照ですがほかのサイトも似たような感じでした) しかし調べれば調べるほど、 難しい言葉や表現が多く、 どんな事柄を選んでレポートを書けばいいのかが わからなくなってしまいました。 そこで、権利能力なき社団について書くには ・どのようなことに触れて書けばいいのか  →このことには必ず触れたほうがいい    この事柄については書くべき    などということがあれば ・どういう順番で権利能力なき社団について説明すれば わかりやすいレポートになるか ということが伺えればと思っております 800字をどのようにまとめるか、 情報が多く、法律関係にまったく無知な私には 難問です。 また任意団体(?)というものと 混同してしまって、 なかなかうまくいかず悩んでおります。 わたしの勉強不足と理解力のなさが 招いているものであるのは重々承知しておりますが もしこの分野に詳しい方がいらっしゃいましたら こんな私にもわかりやすくご指導いただけないかと 思っております。 厚かましいお願いではありますが よろしくお願いいたします。

  • 権利能力なき社団(営利団体)の具体例

    法律学習初心者です。 権利能力なき社団の社員の責任について、 「通説では有限責任とされているが、 最近では非営利目的であれば有限責任、 営利目的であれば無限責任とする見解もある」 と、下記の本で読みました。 (有斐閣Sシリーズ民法I第3版補訂p.96) 私は、権利能力なき社団といえば、学友会・婦人会などの 非営利目的のものしかないと考えていました。 そこで、定義を調べてみると、 単に 「社団法人と同様の実態を持つが法人格を認められていない団体」 とありました。 とすれば、営利目的の権利能力なき社団も存在する、 ということですよね。 その具体例としては、 「設立中などで未登記の団体」 が挙げられるのでしょうか。 会社法を知らないため、 いまいちピンときません。 権利能力なき社団のうち、営利団体として活動しているものの 具体例を教えてください。

  • 権利なき社団に当たるのでしょうか

    小学校時代のクラスで「還暦祝い」をするとの案内が新年早々届きました。 昨晩、気の合う級友四人でその件を肴に・・・「またかよ、いつも突然なんだよな」 「開催日が二月末、幹事数名はまもなく退職する公務員、自分たちの都合ばっかり」のなどなど。 事実いつも「厄年の御祓いをする会」とか「何々の会」とか勝手に設立していますが、もめ事はやめようということで、四人とも我慢してきました。 ただ今回の「還暦祝い」、四人とも家族やその他などで済ませていますし、偶然四人は三月、四月、六月生まれ。四人とも「今頃、還暦祝いといわれても」が正直な気持ち。 「今まで我慢してきたが、60歳は切りのよい年、退職後第二の人生を踏み出す年。法律などを基にしっかり忠告してやろう」との結論になりました。 このサイトにも「権利なき社団」の質問・回答は数件有りますが、私たちのケースと違うようです。 http://hyogo-nourinsuisangc.jp/chuo/hukyu/02keieikouza/01kumiaidantai/kumiai-syadan.pdf  には下記のように記されています。 人格なき社団とは いわゆる人格なき社団であり、以下の条件を満たしたものをいう。 (1) 共同の目的のために結集した人的結合体であって (2) 団体としての組織を備え (3) そこには多数決の原理が行われ (4) 構成員の変更にもかかわらず、団体そのものが存続し (5) その組織によって、代表の方法、組合の運営、財産の管理その他団体として主要な点が確定しているもの (1)は理解出来ますがほかは残念ながら理解出来ません。    (3)六名が集まり、会長一名、幹事(この場合監事が妥当なのでは?)五名を互選?したようです。今までの会や今回も会が終われば自動消滅ですから規約などあり得るはずがありません。 「権利なき社団」に当たらなければ「やり放題で、忠告出来ないのでしょうか」 「クラス全体のことを考えず、自分たちの都合で勝手に会を設立」 そんな連中にそのたびごとに忠告も言えず、我慢しているしかないのでしょうか。 法律などを基に忠告する方法がありましたら、教えてください。 よろしくお願いします。

  • 一般社団法人が、解散するとき、残余財産を社員がもらえますか?

    一般社団法人が、解散するとき、残余財産を社員がもらえますか? 非営利が原則ということで、どの一般社団法人の社員ももらえないですか? 一般社団239条3項 残余財産の帰属は、定款で定めるところによる。 定款により残余財産の帰属が定まらないときは、その帰属は、 清算法人の社員総会又は評議委員会の決議によって定める。 以上のどの方法によっても帰属権利者が定まらないときは、残余財産は 国庫に帰属する。 とあります。 少し疑問に思ったのですが、一般社団11条2項に 社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える 旨の定款の定めは効力を要しない。とあります。 ですから、定款により残余財産の帰属が定まらないとき その帰属が採算法人の社員総会とか評議員委員会の 決議で、社員に残余財産を与えるという決議がされる可能性 があると思います。 でも、定款で定めることを、11条2項で禁じているのに、 決議で社員ひとりひとりに与えるという決議がされてしまって、 社員が財産をえるようなことになれば、 ある種、国家財産が天下り役人達に、食いつぶされる ことになるような気がしています。 どうなんでしょうか?そういう決議がされる可能性はあるんでしょうか。 そして、実際はどんな結末で、特殊法人は整理されているんでしょうか?

  • 一般社団法人の

    現在任意団体から一般社団法人への移行を検討しています 法人や団体も一般社団法人の社員となれるということですが 現在会員は全て団体会員で任意団体です ○○市文化協会、○○協会といった団体です この団体を社員として登記するときに 団体は登記をしていないので 社員としての実印を求められません それぞれの会の長の印鑑でよいのでしょうか それぞれの団体の長は選挙等で選ばれます

  • 権利能力なき社団の会計さんの義務について

    ○○委員会、PTA、○○同好会のような集まりに入った場合、会費を取られますが、これは個人事業主の場合、必要経費で落とせるのでしょうか?(年間4万円くらい) ○○同好会として領収書は切っています。 また、これらの団体は営利事業は行っていないため、課税はされないと思いますが会計になって通帳を作った場合、個人名が必要です。 会計個人には課税されないのでしょうか? 実は私が40人会員の○○同好会の会計になってしまいました。現在繰越金が400万ほどあります。 最近の事情から権利能力なき社団(人格なき社団)にも納税の義務がありそうで心配です。 会計と言っても決算書は作っておらず必要な時(寄付、勉強会、飲み会等)に下ろして支払っています。 このままで法律に触れないのでしょうか? 質問の内容が整理出来ておらずわかりにくいと思いますが、よろしくお願いします。

  • 法人と任意団体 印鑑証明について

    法人格をとっているものが、法人。 法人格のない団体が任意団体。これは正しいでしょうか。  法人格をとる、というのは登記をするのとは違うのでしょうか・・・。法人は必ず印鑑証明書があるのでしょうか。また、任意団体の場合は、印鑑証明書とかは登録できないのでしょうか。  団体というからには、代表者は必ずいるのでしょうけれど。  たとえば、教育委員会などはどういう団体になるのでしょうか。代表者という考え方はありますか?何人かの委員がいるのはわかりますが。  いろいろと質問があちこちにとんですみません。  お分かりになる方、ぜひ教えてください。