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夏目漱石の文明論

レポートの課題で漱石の文明論について調べていて、漱石文明論集を読んでみたんですが、よく分かりませんでした。漱石の文明観を分かりやすく教えてください。おねがいします。

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回答No.1

明治四十三年八月、修善寺で吐血し死線をさまよった漱石は、療養のためしばらく創作活動を休んでいました。 けれども翌年六月頃から体調も良くなったのか、いくつかの講演の要請に応えるようになり、八月には関西に招聘されて四つの連続講演をおこないます。 「道楽と職業」…8月13日 「現代日本の開化」…8月15日 「中味と形式」…8月17日 「文芸と道徳」…8月18日 この四つの講演は、漱石自身の手によって文章化され、さらに「文芸の哲学的基礎」と「創作家の態度」を加えて、後に『社会と自分』というタイトルで出版されます。 漱石の「文明観」を、小説ではなく評論という形式で見ていこうとするなら、こうした作品を読んでいくのが良いと思います。 まず「現代日本の開化」で、漱石は、総論的な立場から、近代化とはなにか、その問題点はなにか、とくに日本が抱える「外発的開化」の問題点を述べます。 これに関しては、以前ここで回答しているので、良かったら参考にしてください。 http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=929665 近代化していく社会の中で、職業は次第に細分化され、その結果、個人は孤独を余儀なくされていく、という考察をおこなっているのが「道楽と職業」です。 同じく、急激に移り変わる社会を道徳の面から考察したのが「文芸と道徳」。文芸思潮上の概念、ロマンス主義と自然主義というふたつの潮流を道徳観に援用しつつ、自然主義の時代に、どのような道徳観を持つことができるのかが述べられます。 「中味と形式」は、社会的変化に対応して、政治形態も変わっていかなければならない、という内容のものです。 「一言にして云えば、明治に適切な型というものは、明治の社会的状況、もう少し進んで言うならば、明治の社会的状況を形造るあなた方の心理状態、それにピタリと合うような、無理の最も少ない型でなければならないのです」 そのためには傍観者であってはならない、と言います。 非常に興味深いのは、漱石が人々の暮らしや文化、職業あるいは道徳といったものを、個々バラバラにとらえるのではなく、社会のありようとして全体的にとらえ、かつ、それぞれの要素が有機的に関連しあっていると考えていた点です。 おそらく漱石は、実際の社会を見る中から、こうした思想を培っていったのだと思います。 よく分からない、とのことですが、漱石はあくまでも作家であって、みずからの思想を表現する手段は、なによりもまず、小説においてでした。 したがって、いわゆる「文明論」集も、きわめて独創的な考察がなされていたり、現象が深く掘り下げられていたり、鮮明な指針が提示されていたりするわけではありません。それだけに、きわだって難解なものではなく、普通に読んでいきさえすれば、理解できるのではないかと思います。 『三四郎』で、あっさり「(日本は)滅びるね」と言ってのける広田先生や、あるいは「日本程、借金を拵えて貧乏震いしている国はありゃしない。……西洋の圧迫を受けている国民は、頭に余裕がないから、碌な仕事は出来ない。……日本国中何所を見渡したって、輝いている断面は一寸四方もないじゃないか。悉く暗黒だ」という『それから』の代助の独白など、漱石の作品の登場人物たちは、きわめてペシミスティックに現実をとらえています。 けれども漱石は、社会の矛盾は矛盾としてとらえつつも、そこから離れて高等遊民として生きる代助や、「冷然たる傍観者」(「中味と形式」)の広田先生の生き方を肯定しているわけではない。 こうした文明論を読むことで、漱石が何を批判し、どういった方向性を模索しようとしていたのかがはっきりと見えてくる。そうして、作品が一層奥行きをもってとらえられるのではないかと思います。 あと、「私の個人主義」に関しては、 http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=885537 で概略を紹介していますので、こちらも参考になれば。

参考URL:
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=929665
sausuke
質問者

お礼

ありがとうございました。とても助かりました。参考にさせてもらいます。

その他の回答 (1)

回答No.2

No.1の方詳しく調べていらっしゃるようですね。私は素人ですが、現在の自分の理解がある程度当たっているかどうかに興味があるので、不遜にも読み返すことなく述べてみたいと思います。 漱石は、日本の文明開化について危機感を持っていました。それは自分が英国留学中に神経衰弱に陥ったことが背景となって、いわば体験的に感得された文明観であったと思います。漢文学の素養があった彼は、留学して研究に打ち込んだ英文学に「なんとなく裏切られた感」があるとたしか書いていましたが、長い歴史を経て日本人の血肉となってきた漢文学と違い、英文学はどうしてもなじめないなにかが残るものであったのでしょう。 西洋の開化が長期間にわたる内発的なものであったのに対し、日本の開化は国家の独立という要請のもと、短期間に行われつつあり、日本人に伝統的に培われてきた精神的特質とは相容れない制度や生活様式が急激に流入し、強制されることが日本人の自我に危機をもたらすと考えたのです。 私はおおむね上記のような理解が可能と考えていますが、みなさんいかがでしょうか?

sausuke
質問者

お礼

どうもありがとうございました。参考にさせてもらいます。

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