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太宰治『人間失格』の擬人法
太宰治『人間失格』に「おい! とんだ、そら豆だ。来い!」という箇所があります。ここで換喩が使われているのはどうしてなんでしょうか?また、どうしてソラマメに擬人法を使っているのでしょうか?
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おそらくこういうことを聞いておられるのではないのだろうと思いながら、回答します。 ご質問が典拠があるものでしたら、それを明示してください。 手元にある佐藤信夫『レトリック感覚』を見てみると、換喩に関しては、アンリ・モリエの『詩学とレトリックの辞典』から引用されています。 ---p.144からの引用--- 換喩とは、「あるひとつの現実Xをあらわす語のかわりに、別の現実Yをあらわす語で代用することばのあやであり、その代用法は、事実上または思考内でYとXを結びつけている近隣性、共存性、相互依存性のきずなにもとづくものである」 ----- つまりものごとのあいだに類似関係を認めたものが「隠喩」であるのに対し、隣接関係を認めたものに対して働く比喩が「換喩」ということです。 この『人間失格』の場合、脈絡は 「腹がへったなあ」という堀木に対し、主人公は「いま、したでヨシ子がそら豆を煮ている」と答えます。ふたりは議論し、やがて腹がへった堀木がそら豆を取りに行く。 そこから堀木の「おい! とんだ、そら豆だ。来い!」という表現が生まれてくる。 つまり「そら豆を煮ているかと思ったら、とんでもないことになっていたぞ」という意味がこの言葉にあらわれているわけです。 ここにおける換喩は、まず「そら豆」という一語で「そら豆を煮ている」という行為全体を現わしている、というものがあるでしょう。 さらにここではもうひとつ、換喩には「原因と結果の隣接性」という関係を見て取ることができるでしょう。 「そら豆を取りに行った」→「とんでもない光景を見てしまった」 これは「そら豆」と「とんでもない光景」の類似による隠喩的な関係ではなく、原因と結果という隣接的関係である換喩のはたらきと見ることができます。 また「擬人法」(活喩)というのは、換喩の系列に属するものではなく、隠喩の系列に属するものとされます。 ・「村は寝静まっていた」 という表現は、換喩ですが、ここでは「村」を擬人化しているわけではなく、その村の家々とそこに住む人々を指しているわけです。それを「村」という一語で示すことによって、村全体がしずまりかえった様をあらわしている。その表現と ・「ラジオが語りかけた」 のように、「ラジオ」を擬人化している表現のちがいがおわかりでしょうか。 ここでの「そら豆」は、「そら豆」を人間に喩えているわけではないと思うのですが。 もし回答がずれていたら、補足要求で。 その際、この箇所が擬人法であるというなら、その典拠をお願いします。
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