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「レ・ミゼラブル」を読まれたことのある方へ

KINGBIRDの回答

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  • KINGBIRD
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回答No.6

 「ああ無情」として私が読んだのは友人の家で、ダイジェスト版でした。うさんくさい話だと思いながらぱらぱらと斜め読みをしたのが小学・・・2年生のときですね、確か。私の犬が私の家にくる前ですから。その時は読むのにまだ早すぎたんでしょう。  高校に入って実家の棚に岩波の「レ・ミゼラブル」があることに気がつき、二晩かかって全部読みました。  当時の刑務所が犯罪者を更生させるためのものというより「人の皮をかぶった獣」であると信じられた人間を閉じ込めるためのものだったというくだりや前科がどこまでもジャンバルジャンを追いかけていく様子、現代との社会的な価値観の相違、警官であるテナルデュエの職業的なしつこさや世相を映した信念などを特に覚えています。母の悲惨な死に方のわりに恐ろしいまでに回りに順応して生意気に育っていくコゼットの姿に10代の子供というのはこういうものなのか、と思ったり。  「親の心子なんちゃら」という言葉が頭に浮かびましたが、その高校の時からの私がまさにその言葉どおりなのですから、近親憎悪ってやつでしょうか?  印象に残っているのは、コゼットがドレスをあつらえるシーンです。「顔は可愛いが服がなっていない」と言われて自分なりにキレイと思った組み合わせの生地で作るのですが、母親がいなかったためにその生地では変だということが彼女にわからなかったのです。何気なく描かれているところですが、親から子へと継がれるものがないという点で私も片親分同じ立場にいたからです。  ぼろぼろになりながら、無力な中で自分を痛めつづけた社会に自分の子供を預けた母親に対し、ジャンバルジャンの保護を当たり前のように吸収して、年頃になって着飾ることに夢中になってくるコゼットにあまりいい感情をもっていませんでしたが、そこだけはよくわかりました。  読みながら年齢層の違いを上手く描写しているなあと感心しました。革命に走っていくマリウスの血の気の多さ、変化を突き進める若さとか。  しかし、なんと言っても私にはジャンバルジャンがよくわからなかったことが一番心に残っていることでしょうか。  なんだか、貧しい育ちをして教育もろくに受けなかっただろう男で搾取されるだけされながら何の誇りも持てぬ仕事をあくせく働いたその結果何もかもを奪われた人間が、過酷な牢獄生活を経て中年になった後に一体何に触れて突然頭も切れて商業の才能もあって機転も利いて、何よりあれほど献身的な性格に改心したんだろうとずっと思っていました。  なんていうか、人間って育った環境によって層っていうものがありますよね。俗っぽい言葉でいえばアッパークラスとかロウワークラスという言葉になりますが、単なるその時の身分という狭義を超えて代々伝わっていくような精神というものでしょうか?どういう人間であろうとするか、その方向を決めるものによっても人間を分類できるという意味で、差別的な区分けを意図して言っているのではありません。#4の方が仰っている、「普通に生活していたら一生縁のなさそうな」って感じです。  私にとって、ジャンバルジャンはそういう意味で突然変異でした。なぜそこまで自分を非難する人たちに自己弁護をしないのか、自分のできることの中でなぜその行動を選ぼうとするのか、彼が神父の親切によってというよりその好意を受けて何かを考えて、そして大きく自分の人生を変えたことだけはわかったのですが、一体どんな考えをまとめあげてそこに至ったのかさっぱりわからなかったのです。  「レ・ミゼラブル」を読んだ後になりますが、父がぽつりと「自分の人生を変えるのは本当にエネルギーのいることだ。もしかすると人一人の手に余るほどのエネルギーを必要とすることかもしれない。自分の性格を変えるということだからだ。年を取ればとるほどそれが難しくなっていく。大抵の人間は変えることができずに死ぬ」と言ったことがあります。  ご質問を拝見したとき、私が回答させてもらえるような質問ではないと思ったので素通りしようとしたのですが、「レ・ミゼラブル」の主人公ジャンバルジャンの並外れた意思と、彼が回りの人間へ望んだことを理解できなかった私、父の言葉が重なり合ってこちらにおじゃまさせて頂きました。  人間は必要とされることを必要とする生き物だと思います。人を言葉で揺さぶるとき、その属している場所、恃みとしている場所から引き離すことさえできればどれほど強い人間でも脆いものだということを知っています。そう信じている私に、ジャンバルジャンがその行動を通じて回りの人間に臨んでいたのは自分自身の贖罪なのか何なのか、とても難しい本でした。彼が言い訳がましいことを一つもしなかったからです。  だから最後に彼が死ぬ場面、とても苦い気持ちで眺めていました。小説以外で、このように深い誤解が全て解け、めでたしめでたしということがありえるわけがないと思ったから。  今、読んだときのことを思うと自分はどれほどよりよい方へと変われたのでしょうか?当時と同じ、与えられることを当たり前に思い与えられないものを不満がって、悩みともいえない悩みをさも大事に振り回す幼いままのような気がします。  なんだかそう思うとまた読み返してきたくなりました。実家にあって、今私は入れないのですが・・・図書館にあるかな?  そうそう、うんと昔の小説なので最初の導入部、時代背景やらなんやら細かく買い込んであって本筋に入るまでが長いんですよね。「一行目で読者の心をつかめ」なんてなったのはいつからなんでしょうね?    回答をだいぶ削ってしまったので、読む方にわからない文になってしまったことをお詫びします。

coranevil
質問者

お礼

お礼が遅くなってすみません。 ご回答を見ながら、いたる所に共感する部分があり、うれしい限りです。「革命に走っていくマリウス」の心理的な推移なんかは、とても興味深く読んだ記憶があります(一時は「皇帝ばんざい!」とか言ってましたよね。確か)。 KINGBIRDさんは「私にとって、ジャンバルジャンはそういう意味で突然変異でした」とおっしゃられていますが、私も自分の理解を超える登場人物がたくさんいます。特に、少年ガヴローシュ(でしたかね?)のあの底抜けの明るさの源がどこからくるのかが分かりませんでしたね。「パリーの街が育てた」というような感じでしたが、無理があるような…私の理解を超えています。また、ちょっと論旨がずれますが、テナルディエが一生改心せず悪党のまま終わってしまうのも、作家の意図が見えず残念でした。「世の中には、どうしようもない悪人というのが存在する」ということでしょうが、他の登場人物には何らかの“救い”(というか読者に感銘を与える美しい部分)を与えているのに…「どうして彼だけ?」という感じでした。 「自分の人生を変えるのは本当にエネルギーのいることだ」ということですが、もしそうなら、私も含めて多くの人は「ジャンバルジャンのようになりたい」と願いつつ、「テナルディエ」的な一生に終わっているのかもしれません。 いろいろと考えさせられるご回答で、この質問を立ててよかったと心底思います。(といいつつ、お礼が遅いのですが…) どうもありがとうございました。

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