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磁石の質問回答の反省をこめて。。。

siegmundの回答

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  • siegmund
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回答No.2

物理屋の siegmund です. 「棒磁石を縦に割ると」の質問は「子供(小学生)に分かる説明を」 ということでしたが, 一挙に大学院あるいはそれ以上のレベルになっちゃいましたね. 前の質問への補足という点から行きます. どうも,chukanshi さんには釈迦に説法というう気がしますが... マクロな磁石同士(棒磁石を割ったもの同士,など)の磁気的相互作用と, ミクロな磁石 (磁気モーメントと言う方がいいかも知れません,すなわち電子や原子) 同士の磁気的相互作用とは異なります. 前者は磁場を経由した相互作用です. つまり,1番目の磁石が周囲に磁場を作り, 2番目の磁石がその磁場を感じる,という仕組みです. 別に,1,2の役割は入れ換えても構いません. こういう相互作用を「磁気双極子相互作用」と呼んでいます. この相互作用は「棒磁石を縦に割ると」の回答の通りの結果をもたらします. 一方,ミクロな磁気モーメント同士の相互作用は chukanshi さんもお書きのように 量子力学的効果が主要です. http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=191280 の私の回答でもちょっと触れましたが, 電子間にクーロン相互作用 V がありますから (1)  ∫ψ1*(x1) ψ2*(x2) V(x1-x2) ψ2(x1) ψ1(x2) dx1 dx2 のような,いわゆる交換積分が電子の磁気モーメント間相互作用として現れます. この交換相互作用は,量子力学的効果,しかもパウリ原理に関連した効果です. (1)は波動関数がどのように広がっているかによりますが, 単に電子密度だけの話ではなくて波動関数の位相関係が重要です. この相互作用は,たとえ電子を格子位置に止めて置いても (絶縁体をイメージしてください),波動関数の様子によって ↑↑が有利になったり(強磁性的),↑↓が有利(反強磁性的)になったりします. もちろん,電子も磁気モーメントを持っていますから双極子間相互作用もありますが, 交換相互作用が圧倒的に優勢です. 交換相互作用は短い距離間しか作用しませんが, 双極子間相互作用は長い距離でも作用します. さて,棒磁石を割る前には交換相互作用で↑↑になっていたのだから, もういちど破片を押しつけて交換相互作用が優勢になるようにすれば もとに戻らないのか?,と言う疑問が当然わいてきます. おそらく簡単には元のように戻らないのでしょう. 割るということは,もともと強く結合していたものを切るわけですが, ミクロに見れば切り口はでこぼこでしょう. ミクロに見て元通りに合わせられるとはなかなか思えません. また,結合が切れたところはいわゆるダングリングボンドになっていて反応性が強く, 割った瞬間(?)にそこに空気中のイオンがついたり酸化されたりして 表面の状態が変わってしまい,いわばコーティングしたみたいなことになります. そうすると,単に押しつけても割る以前のような交換相互作用は働きません. 残るのはマクロな磁石同士の双極子相互作用で, このため↑↓になるのでしょう. ------------------ さて,後半です. こちらは滅茶苦茶難しい. > 強磁性相互作用の起源の説明 ですが,強磁性的相互作用があるかどうかと, 実際に強磁性状態が実現されるかどうかは一応別の話です. スピンの場所を固定したモデルでも, 例えば1次元の強磁性イジングモデルは絶対零度でのみ強磁性状態となり, 有限温度では常磁性状態であることが知られています. 上のようなスピンの場所を固定したモデル(イジングモデルやハイゼンベルクモデル) でも厳密な話はなかなか難しいのです. chukanshi さんのご質問の長岡フェロやフラットバンドの話は 電子が動ける話ですので,またもっと難しくなります. 鉄,ニッケル,コバルト,などの遷移金属に対するバンド計算では 強磁性状態が出現するようです. ただし,バンド計算は本質的に一体近似 (相互作用の影響をいろいろな形で取り込んでいるにせよ)です. 一体近似は秩序状態が出現しやすいので, これをもって強磁性状態が出現することが示されたとは言えません. 軌道縮退やフント結合などを省いてしまって簡略化したモデルの1つが ハバードモデルの類ですが, 例え簡略化しても多体問題で厳密な結論を得るのは容易なことではありません. http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/halJ.htm にこの方面の第一人者の田崎による優れたレビューがあります.

chukanshi
質問者

お礼

siegmund先生、ご指導ありがとうございます。空間スケールだけではなく、質問レベルも飛躍してしまいました。その上、スピンを固定した話と、遍歴電子の話を区別していないような質問で、錯乱した質問になってしまいました。お恥ずかしい限りです。 混乱した質問なのに、物理の先生方から、優れたコメント、回答をお寄せ頂き感謝いたしたいと思います。 「磁性はムズカシイ」という言い訳を残して「お開き」にいたしたいと存じます。 みなさん、お騒がせしました。m(_ _)m。

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